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ヒト神様のお話 それは昔々、今から四千年も前のこと。 まだ人間と魔物が互いを敵視しながら、それでも調停を保って、それぞれの生活を続けていた頃に、 その身に絆を体現した者、ヒト神様は降り立ちました。 光り輝く桃色の髪と、生気に満ち溢れたその姿。 そのあまりの美しさに、人間も、魔物も、すっかり魅せられてしまいました。 そしていつの間にか、ヒト神様の周りには、多くの人間と魔物が集うようになり、 そこから、二つの種族の繋がりが生まれたのです。 ヒト神様の傍には、いつも、三匹の僕が寄り添っていました。 それぞれ名をスイクン、エンテイ、ライコウと呼ばれ、ヒト神様ともども、皆に崇拝されました。 それに気を良くした三匹の僕は、皆の前で、何度も華麗なる奇跡を起こしてみせます。 時には炎が空を彩り、時には雷が土に命を吹き込み、また時には、水が大地に潤いをもたらしました。 あまりの事に、人間も魔物も驚き歓喜して、三匹の僕を褒め称えます。 彼らが、三匹の僕から、三匹の賢者と呼ばれるようになるまで、そう時間はかかりませんでした。 ヒト神様と、三匹の賢者。それを中心にして、人間と魔物は集い、調和を成していきました。 そこに町ができて、お城ができて、ヒト神様はそのお城の領主となり、平和がつむがれていきます。 いつしか人間と魔物との間に確かな絆が生まれ、協力し合える、豊かな心が芽生えました。 それから数年ほどして、人間と魔物との共同生活が日常に変わった頃、 ヒト神様の前には、たくさんの人間の女が集まりました。 女たちは皆、ヒト神様と結婚して、その間に我が子を孕まんとする者たちでした。 けれどヒト神様は、その中の誰とも交わることなく、ただもの悲しそうに、町を見渡すばかり。 そう、なんとヒト神様は、恋をしていたのです。それも、自分と同じ人間ではなく、一匹の魔物に。 やがて、人間と魔物たちはそのヒト神様の想いを知り、話し合いました。 そして彼らは、人間であるヒト神様と、その相手の魔物との繋がりをもってして、 人間と魔物との間の確かな信頼を、形にしようと決めました。 直ぐさま、町の住民たちにより、ヒト神様の意中の魔物探しが始まります。 けれど、その魔物は一向に見つかりません。それもそのはず、だって彼女は、町の住民ではなかったのですから。 それを知った住民たちは、探索の域を町の外に広げ、旅を続けました。 人間と魔物が共に歩む、長い旅。 そこにどんな苦難が在ろうとも、彼らは必死で乗り越え、その度にまた、強い絆が生まれます。 そして遂に、目的の魔物は見つかりました。魔物は自らをミュウと名乗り、旅の一行と共に、町へと赴きました。 城の王室で、再びめぐり合ったヒト神様とミュウ。二人は直ぐに結ばれ、人間の王様と、魔物の女王様が誕生しました。 やがて二人の間には、可愛らしい二匹の子供が産まれます。 そのあまりの可愛らしさに、その子供達は町の住民から親しみを込めて、こう呼ばれるようになりました。 ”萌えっ娘”と。 ポケットモンスター ↓(二次創作) 萌えっ娘もんすたぁ ↓(三次創作) 萌えもん、ゲットだぜっ! プロローグ 現代のマサラタウン、オーキド研究所にて……。 カントー地方を代表する萌えもん研究者、オーキド博士(愛称)は、 数千もの”モンスターボール”が並べられた部屋を、憂いを含んだ表情で眺めていた。 何か悩みがあるらしいのだが、どんな悩みなのか、まったく予想がつかない。 きっと博士のことだ、何か常人には理解できない悩みをもたれているのだろう。 助手のマコトは、そう考えた挙句、博士に問いかけてみることにした。 「マコト君」 「はかせっ……て、はい、何でしょうか?」 こちらから問いかけようとしていたのに、話しかけられてしまった。何の話だろう? と、マコトは首を傾ける。 「傾けるな。私の目を見なさい」 「す、すいませんっ!」 慌てて向き直り、オーキド博士と視線を合わせるマコト。しかし、何だか違和感があり、視線がずれる。 苦手なのだ。人の視線というものが。 「はぁ……まぁよい」 「すいません……」 誰かと話すとき、しっかりと相手の目を見て話すのはマナーであり、常識だ。 しかしそれが苦手な人というのは、わりと多いもので、マコトもその内の一人だった。 「マコト君、この部屋に並んでいるこのモンスターボールを見て、何か思うことないかね?」 「思うこと……ですか?」 うぅん、何だろう、何かあるだろうか? 考えるマコト。 博士は一体、どんな回答を求めているのだろうか? 今の様子からして、そう明るいものには思えない。だとしたら、何だ……? ふと、何か心に染み渡ってくるような、冷たい波紋にとらわれる。 「……寂しい?」 「うむ」 そう、なんだか寂しい感じがしたのである。理由は……思い当たるものがあった。 「そうか、ここにあるモンスターボールは、全て――」 「トレーナー達に忘れ去られた、行き場のない萌えもん達のものじゃ」 博士のその言葉を聞いた途端、薄っすらと感じていたもの悲しさが、ふっとハッキリしたものに変わる。 ここで彼は理解したのだ。博士の悲しみの源に。 「捕まえられた挙句、一度として日の目を浴びることのないままに転送されてきた、悲しき娘たちじゃ。 強くなるために、大きくなるために、人と共に歩むために脚を並べたというのに、その相手に見放された哀れな娘たちじゃっ!」 「博士……しかし、萌えもんトレーナー基本法には、所持するポケモンは六匹までだという正式なルールがあります。 それを破ってしまえば、一人の人間が、多くの萌えもんを利用できることになってしまう。 そんなことになったら、いつどこで萌えもんの悪用を企む者が出てくるか。 現に今でさえ、ロケット団と名乗る悪者の結社が、世に潜んでいるでは在りませんか」 「そんなことはわかっておる。わかっておるとも……じゃが、しかし……」 博士は床に膝を着いて、部屋の電気から放たれる光を照り返す床に、右の拳を叩きつけた。 「どうしてこんなに可愛い萌えっ娘たちを平気で置いていけるのじゃあ……。最近のトレーナーは悪魔かっ!」 「今に始まったことじゃありませんよ! 博士!」 「うるさい! 何故聞こえん。この部屋の中でただひたすらに泣いておる娘達の声が……」 ピカピカに磨かれた床に、男の涙がしたり落ちる。 「萌えんのかっ! 今のトレーナー達は、萌えを忘れてしまったのかっ! どんな萌えもんも分け隔てなく愛するのが、トレーナーの揺るぎ無き信念だったではないかっ!」 「博士……」 マコトの中にあるオーキドの人物像が、輝く。 この人は、本物だ。本当に、心の底から萌えもん達を愛しておられる。全力で萌えている! 「マコト君」 「何でしょう? オーキド博士」 床を見つめたまま、博士が口を開く。 「明日旅に出る予定の子供たち、何人じゃったかな……?」 「レッド君にグリーン君、ブルーちゃん、イエローちゃん、そしてシゲル君にサトシ君の、合わせて六人です」 「そうか……それなら、早く最初の友達を選んであげねばならんな……」 「? しかし博士、始めのパートナー萌えもんは既に選んでいたのでは?」 「気が変わった。……子供たちには、この部屋の中の萌えもん達から一匹を選んでもらう事にする」 「ほ、本気ですか博士? ここにいるのは全て、トレーナーが戦力外として判断した能力の低い――」 「黙れっ! この世に、役立たずな萌えもんなど存在しない!」 立ち上がり、激昂し、叫ぶように言い放つオーキド。マコトは自分の失言を呪った。 「何故理解しない。彼らは……こんなにも美しいではないか……。 トレーナーに萌えさえあれば、どんな萌えもんでも輝けるはずじゃ!」 「博士……。はい、おっしゃる通りです」 「うむ」 そして熱い握手を交わすオーキドとマコト。変態である。 「我々の手で導きましょう、博士。変わってしまった、現代のトレーナー達を」 「そうだ。この世界は壊れかけているのだよ。立ち上がらねばならんのじゃ」 「頑張りましょう、博士」 「うむ!」 新たな何かが始まってしまった気がした、旅立ちの日前夜の出来事であった。 つづく。
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萌えもんトレーナーとは萌えもんを戦わせるのが仕事の人間だ。 だが、単に戦わせていればいいだなどということは決して無い。 まず萌えもんからの信頼を勝ち得て、その上で常に最高・最良を目指すことが求められる。 単にバッチやマスターであるという立場などだけで言うことを聞かせてみたとしても、 それは腕のいいトレーナーではありえない。 全てがそうなるとはさすがにいえないが、少なくとも広く名を知られるトレーナー達─── ───ジムリーダーにしろ四天王にしろ、その信頼関係は磐石である。 さし当たって、自分も手持ちの萌えもん達とのよりよい信頼関係を築かんと行動を起こした俺だが…… 「……なんで気がついたら子守してるんだろうね俺…」 今の俺の背中には、赤子が赤ん坊用のおもちゃを手にしたまますやすや寝息を立てている。 といっても無論俺の子ではない。というか、人間の赤ん坊ではない。 いつもは俺の相棒、ガルーラのお腹の袋に入っている子だ。 それが今はなぜ俺の背中にいるかというと…… これまではどうにか勝ち抜いてきたが、この先戦いはますます厳しくなるばかり。 自分達のレベルアップは勿論欠かせないが、同時に互いの絆を深めることも重要だ。 そう考えた俺は、皆と一日ずつとことん話を聞いて、悩み解決等に走ることにしたのだ。 で、手持ちの一人一人と十分に話を聞いて、ちょっとしたお願いを叶えて…… 「今日はガルーラの番だよ。悩みとか、不満とか、お願いとか、 何でも遠慮せずに話して欲しい。 俺に何とかできる範囲なら、全力で手伝うから」 そう言った俺へのガルーラの返答は。 「ここのところこの子がよく泣くせいで、十分に眠れてなくて……」 確かに、このところ泣き喚く子供を彼女があやす光景をよく見るようになったな… 疲れているように見えたのもそのせいらしい。 というわけで、俺が子守して、その間にガルーラはしっかりと休息をとることになったのだが…… 「やっぱ、目だってるよなぁ…」 というか、目立たない訳がない。 ガルーラ自体、そもそもカントーではサファリパークでしか確認できない非常に珍しい萌えもんだ。 その生態など(とくに性別比)にはまだまだ不明な点が多く、地道に研究が進められている。 そんな珍しい萌えもんの子供を単独で背中にしょっていれば嫌でも目立つというものだ。 おまけに今俺が居るのはクチバ。 カントー唯一の港町だけあって様々なタイプの人間が居る。 その中には背中の子に興味津々で近寄ってくる者もいれば、なぜ親元から離しているのかと噛み付いてくるものも。 コッソリ大金積むから売ってくれだなんて、頭がどうかしてるんじゃないかってのも居た。 「……このままじゃガルーラが元気になる前に俺がやられそうだ…」 主に精神負荷で。 そんな危険を感じた俺は、街中を離れて草むらの方へと足を伸ばした。 郊外の草むらともなれば、修行中のトレーナーくらいしか人は居なくなる。 「やれやれ、ようやく一息つける……」 人気が少なくなって安心し、深呼吸する。別にこの子が重かったりはしないが、気分的なものだ。 そうやって安心していると…… 「……ん、起きたかな?」 背中の子が目を覚ましたらしい。 寝起きはそう悪くはないらしく、泣き出す様子はない。 あぅあぅと赤子らしい意味不明な声を発しながら、手にしていたおもちゃをぶんぶん振る。 カランカランとおもちゃから軽い音が鳴る。いてて、俺の頭を殴るんじゃない。 と…… すぽーん。 文字を当てるならそんなかんじの放物線を描いて、赤子の手からおもちゃが飛んでいった。 「あーあ……俺なんかぽかぽか叩くからばちが当たったんだ」 などと言ってみても通じるわけがない。 それどころかおもちゃが飛んでいったせいでなにやら泣き出しそうな気配になってきた。 「……マズイよなぁ… さっさと行ってさっさと帰れば大丈夫かな?」 何のことかというと、おもちゃが飛んでいったのは萌えもんがでる草むらの中。 そして、皆に休憩をあげてきたせいで、今の俺の手元には萌えもんがいないのだ。 いや、居るにはいるが、まさかこの子で戦闘するわけには行かない。 考えているうちに、赤子がべそをかき始めた。このままでは思いっきり泣き出すだろう。 「しょーがない…急いでとってくるか」 無謀なのは解っていたが、まさか大泣きさせたまま街に戻ることもできない。 探しに行くしか方法はなさそうだった。 カラフルな色合いのおかげで、おもちゃはすぐに見つかった。 「はいよ。今度は飛ばすんじゃないぞ」 そういって渡してやると、幸い泣き出す寸前で止まってくれた。 あとはここを出れば…… がさっ。 背後で響いたその音は安堵しかけていた俺を凍りつかせた。 慌てて振り向くと、がさがさと音をたてながら姿を現したのは… 「スリープか…!」 運悪くエンカウントしてしまったらしい。 よりにもよってこいつか…… 他の奴ならば出くわしても一目散に逃げればよかったが、念力を使うスリープ相手ではそれも難しい。 実にあっけなく、絶体絶命(?)の大ピンチに陥ってしまった。 けれど、そのとき俺が考えていたことといえば。 (どう動いたらこの子が無事ですむかな……) スリープと俺の身長差からすると背中にしょってる赤子には気付いていない可能性が高い。 だが、動き方しだいでは赤子に気付かれ、攻撃の矛先を向けられてしまう。 だからといって安直に後ろ向きに走ると、見えないから転びやすい上に転ぶと赤子から倒れることになる。 俺が進退窮まっていると、スリープ側から行動を起こされてしまった。 両手を前に突き出し、念波をぶつけてくる。 「ぐぅ……っ」 脳を含めた内臓だけを纏めて揺さぶられるかの様な感覚に、一瞬でその場に倒れそうになる。 根性だけで踏みとどまるが、その間も念力は止まらない。 視界がフラッシュする。ありえないはずのけたたましい笑い声が聞こえる。言葉にしがたいほどの悪臭を感じる。 五感を好き勝手にいじり倒されるその負担に、俺の体はあっという間に悲鳴を上げ始める。 (ガルーラの、子を……あずか、ってるんだ……簡単、にま、負けるわけには……) 必死に己を鼓舞してみても、萌えもんの攻撃に晒されているという状態は変わらない。 限界が訪れるまではほんの数瞬だった。 だが、たった数瞬耐えられたことが、結果を大きく変えた。 「ご主人様ーーー!!!」 唐突に響き渡る声に、スリープの集中が乱れて念力が解かれる。 そのまま崩れ落ちそうになるのをどうにか堪えて振り向けば、其処には。 必死に駆けよってくる、ガルーラの姿があった。 「よくも、よくもご主人様に───!」 遠目にも激怒しているのがよくわかる。 怒り狂ったガルーラのメガトンパンチが、スリープを一撃でぶっ飛ばすのを最後に視界に納め、 俺はその場に前のめりに崩れ落ちた。 慌てふためいて俺の名を呼ぶガルーラの声と、背中で泣き叫ぶ赤子の声が、いつまでも意識にまとわりついていた。 「───っ……ここ…は…」 気がつくと、俺はベッドに寝かされていた。 よくよく見渡すと、萌えもんセンターの宿泊棟に俺が借りていた一室だ。 体を起こそうとすると全身が悲鳴を上げる。 「ぃいってぇぇ…」 その声で気付いたのか、ベッドに突っ伏す形で寝ていたらしいガルーラが体を起こす。 「ご主人様、気がついたんですね。よかったぁ……」 どうやらあの後、気を失った俺をガルーラが負ぶって萌えもんセンターまでつれてきてくれたらしい。 「せっかくお休みだったのに、迷惑かけたうえに子供も危ない目にあわせちまって…… …ほんとに、ごめんな」 「そんな……ご主人様はこの子を必死に守ってくれました。 自分がぼろぼろになってまで… 皆無事だったから、もういいんです」 柔らかい笑顔で、そう返してくれるガルーラ。 その顔を見ていると、なんだか安心したのかまた眠くなり。 もう一寝入りすることを継げて、再び眠りに落ちた。 結局のところ、当初の目的が果たせたのかどうかはいまいち解らない。 まぁもともとが信頼関係なんてものは目に見えるようなものじゃないから仕方が無いのだろう。 これといった大きな変化といえば、ガルーラの俺の呼び方が変わったくらいか。 「なぁ、ガルーラ」 「? なんですか、だんな様?」 「……ちょっと前から聞きたかったんだが、 なんで俺をだんな様って呼ぶんだ?」 直接聞いてみると、彼女は珍しく顔を赤らめて、 「だって、だんな様は私の子をかばってくださったし…」 この台詞の後はなんだかごにょごにょ言ってて聞こえなかった。 要するに、あの一件が理由らしい。細かいことは解らないが。 ともかく、皆と今まで以上に仲良くなれた、気はする。 これからも俺はこいつらと先に進んでゆく。 何処までいけるかはわからないが、きっとその気になれば何処まででもいけるだろう。 「よし。 今日も一日頑張ろうな、ガルーラ」 「はい、だんな様!」
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「マスター、もう辺りも暗いですし、そろそろ就寝の準備をしましょう」 半歩先を黙々と進んでいくマスターに私は提案した。 自分にやや厳しい彼のことだ、疲れ切るまで歩き続けるに違いない。 推測というより、長年彼の傍にいたことからくる経験のようなものである。 立ち止まったマスターは無言で○印のついたフラッグをひらひらと振った。 無口な彼を幼い頃からサポートしてきたフラッグ。 ○×!?の四種類を常備していた。時折、ノートに文字を書いて意思を示すこともある。 「まだフラッグ離れできないんですか?」 再び○印のフラッグ。どうやら随分と依存しているようだ。 「面白いから構いませんけどね。では、準備をしましょう」 私たちはすばやく背負った荷物の中からテントを取り出すと設営を開始した。 十分もする頃には設営も終わり、後は互いにのんびりと眠気が首をもたげてくるのを待つばかりであった。 「……明日は、ここに……」 地図を広げ、マスターはヤマブキシティを指差した。 ヤマブキシティと言えば最近ロケット団関連の騒ぎがあったばかりの町だが…… 「ヤマブキのジムに挑戦ですね?」 恐らく今までの通りに私一人で挑むのならば最難関になるであろうジムがある町。 エスパータイプ。 ニドリーナ(毒タイプ)の私にとって、そのタイプは最悪の相性だった。 だが、私たちもそれを承知でここまでやってきたのである。 十分に修練を積み、研鑽を重ねた私の技(かみくだく)ならば、一撃の名の下に敵を撃破することも出来るだろう。 つまり、その一撃までが勝負ということになるのだが……。 「マスター、どうやって戦う……」 のか、とは続かなかった。 マイペースな彼は、一人でテントに引っ込んでしまったのだ。 今までならさほど気にならなかったことなのだけど……。 私はそれ以上を考えるのをやめて、マスターの眠るテントの中へと入る。 案の定、マスターは大人しい寝息を立てて熟睡しているようだった。 「……ふふ」 なにやら私には変な趣味があるのかもしれない。人の寝顔を見て笑っているのだから。 笑みが落ち着いてくると、ぬるま湯のような眠気が体を包み始めた。 マスターの隣に向かい合うようにして寝転がる。 もうずっとこうしてきて慣れたはずなのに、最近はちょっと恥ずかしい。 でも、ほどよい心地よさがあって私は恥ずかしさを我慢する。 「おやすみなさい」 そっとマスターを手を握り締めて、私の意識は沈んでいった。 思い出されることがある。 随分と色褪せて所々が脚色されるほどに懐かしい記憶だ。 やせいのニドランだったころの……。 「よし、アイツはもう体力も少ないぞ! 頑張れコラッタ!」 何処の誰とも分からないトレーナーと、まだ捕まって間もないのだろう、動きの未熟な萌えもんと私は対峙していた。 万全の状態ならば造作もない相手だった。 だが、トレーナーは私の体力を削るためにレベルの高い先鋒を私に当てていた。 悪いことに、電気タイプの技で体中に痺れが残っていた。 「はい、頑張ります!」 意気込み十分のコラッタが目をも瞑って体当たりをする。 そんな隙だらけの攻撃に対しても、今の私では避けるばかりか、防御することすら適わない。 そして、被弾。 受身を取ることも覚束ぬまま、一メーターほど地面を転がった。 「――っ!」 体中の痺れと痛みが私の意識を覚醒させる。気絶すらも許さない体が酷く恨めしい。 「よし、よくやった。戻れコラッタ!」 トレーナーは満足したような表情でボールに自身の萌えもんを戻し、去った。 それからたっぷり三十分は転がったままに空を見ていた。 晴天。曇り一つない青空が私は好きではなかった。 天気がいい日は今のようにトレーナーがやってくる。 気を休められるのは夜と、天気の悪い日だけであった。 でも、こんなことは日常茶飯事だった。 いちいち心を折っていてはすぐに心が尽きてしまう。 「……トレーナーか」 私にとって憎むべき対象であることに違いはないのだが、行動を共にする萌えもんたちは楽しそうな顔をしている。 その一点のみが私を苦しめていた。 自分たちの萌えもんだけではあるものの、彼らは萌えもんに対して優しいのだ。 だから願わずにはいられなかった。 ……私にも……。 いや、さっきの少年のようなトレーナーではダメだ。 きっと、立場が変わるだけ。いじめられる側からいじめる側に。 ……そろそろ、巣に……。 そうして立ち上がろうとするが、 「――!!」 体中に走る痺れ。 失敗だった。自然と回復しない症状と言うものがあることを失念していた。 ……どうしよう。 巣まで距離があるわけではない。 だが、今の私にとってほんの僅かな距離も無限の彼方のように感ぜられた。 巣に戻らなければ。 もう随分寒い季節なのだ。このままでは凍えて……凍えて……? 「いやだ」 考えない。 考えたらそうなってしまいそうで怖かった。 でも、体を動かせないこの状況では、否応にもそのことが頭に浮かび……。 そんな時だ。 多くの萌えもん(酷く弱った)を背に負って走る少年――マスターに出会ったのは。 いや、出会ったというよりも……。 「……!!」 まだまだ体も発達しきっていない少年が、ボールにも戻してない萌えもんを担げば間違いなく転ぶ。 私は思わず目を背けてしまった。 担がれた萌えもん達が投げ出されて落ちたときの痛みを感じ取りたくなかったから。 だが、萌えもん達の声はない。 最悪の場合を想定しながら恐る恐る瞼を開くと、 「……」 萌えもんを背に乗せたまま、少年は転んだ姿勢でじたばたしていた。 彼らをかばう為に無理な姿勢で転んだのだろう。 観察していると、自然に少年と目が合った。 少年特有の無邪気な目がじっと私を睨み付けた。 「……」 少年はむ、と唸って何かを考えているようだった。 そしてしばし、少年は一度背中の萌えもんを降ろし、私を、顔が襟から覗くようにして懐に突っ込んだ。 勿論、抵抗しようと思わなかったわけではない。 だが、体中の痺れ、そして、僅かの期待が、私の思考を停止させた。 少年は何度も失敗しながら時間をかけて降ろした萌えもんを再び背負った。 「もう少しだ……」 少年が口を開く。 その言葉は、少年自身と、私たちのためのものだった。 目を閉じる。少年の高鳴った鼓動が聞こえてきた。 それは心地よい音だった。 そして同時に、私自身の鼓動も高鳴り始めていたのだが、その時の私にはまるで聞こえていなかった。
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カチャカチャ・・・カツカツ・・・ズルル 萌えもんセンターでの朝食、味は美味しくも不味くもない。 今までそんな気にしなかったけどここの朝食少し微妙かもしれない。 こいつの朝ごはんが食いたいな、センターにキッチンでもありゃいいのにな? そういってオムレツにウィンナーにミストロネーネ?だかのスープをすする。 チビはやけにケチャップが好きらしくドバドバかけてたから注意しておいた。 旅に出ると毎朝こんな感じの食事になるし、下手すると野宿だからありつけないこともある。 この間のときからセンターでの朝ごはんよりも、僕が作った御飯を皆に食べさせたいと思うようになった。 まずいわけじゃないけどおいしいわけでもない。しかもピカチュウがケチャップをドバドバつけてたので健康面でも不安。 この旅を終えたら・・・どうなるのかな。そもそも僕のたびの終着点はどこなんだろう。 バッヂを全部集めること?図鑑を集めること?トレーナーとして頂点に立つこと? 今の僕にはまったくわからないし、どれに関してもそう積極的なわけじゃない。 バッヂだけは今のところ積極的ではあるけどね。なにか僕が思い立った目的があるわけじゃない。 でも、バッヂを集めればきっと何かみえてくるはず、さあ次はグレンジムだ。 ジム行く前にボロボロな萌えもん屋敷を調べて回るけどね。 ジム連戦、次はグレンジムだってさ。炎萌えもんの使い手らしい。 つまりはあたし達の中で不利になるのはそうはいない。 でもジム行く前に寄りたい場所があるらしい。そういえばグレンに古い屋敷があったね。 その中を見て回りたいらしい。そんなわけでこいつはリザードン乗って震えながらグレンまで飛ぶ。 「うう・・・さむい・・・。」 「お前寒がりだよな、波乗りでも震えてるし空でも震えてる。」 「寒いんだもん・・・ああ、早く春にならないかなぁ・・・。」 「そんなに寒いならあたしが暖めてやろうか?フフフ・・・。」 「やだよ、痺れて動けなくなるし痛いんだもん。」 「アハハハハ。んでこの屋敷か、何か用でもあるのか?」 「ほぼ無人だし、元は研究施設だったみたいなんだ。 萌えもんの研究をしてたらしいし、何か役に立つようなものがないかなって思って。 「ふーん・・・研究施設ねえ・・・ま、いいか。」 サンダーはやっぱり研究者とかそういうのが嫌いみたいだ。 ちょっとの笑顔のサンダーだったけど少し曇っちゃった。 でもせっかくだし・・・入ってみよう。 あたしは多少気は進まないけどとりあえず一緒に入ってやる。 中は何もかもがボロボロになっててなかなかの廃墟っぷりだ。 野生の萌えもんも住んでるらしい、ロコンが鏡に向かってあたしらを気にすることもなくくしで髪をといてる。 ふわふわな髪の毛だ、あたしのはあんなふわふわしてないし頑張っても毛が強いから結んでる。 あいつはどんな髪型の女が好きなんだろう?あたしはこの髪型意外考えたことないけどなー。 ガーディも住み着いてるらしく数人でキャッキャッとじゃれ合ってる、年齢的にチビくらいか。 あとは毒萌えもんが住み着いてる。人間の気配も1~2人程度。 ほほえましい光景とか、一転して毒々しい空間とかを見ながら奥へと進んでいく。 何かしろスイッチの仕掛けがあるけどヤマブキほどキツいものじゃないから難なく進んでいく。 ただスイッチがある像をみるとサンダーがなんか険しい顔になっていた。何だろう? なんか萌えもんの像みたいだけど・・・見たこともないやつだ。 暴言吐きながらいちゃもんつけてくるベトベトンとかを追い払いながら進み、小部屋の中に入ってみた。 「あれ、なんだろこれ・・・。」 「研究日誌みたいだな、どれどれ・・・? 日記 7月10日 新発見の萌えもんは私にミュウと名のった・・・。 まさか・・・。」 「サンダー?何か知ってるの?」 「いや・・・多分きのせいだけど何か引っかかるんだよね。」 「そっか・・・ちょっと気になるねこの研究日誌、メモしておこう。」 「なあ、あそこの小部屋にも似たようなのがあるぞ?」 「あ、本当だね。見てみよう。えーっと・・・? 日記 7月5日 ここは南米のギアナ ジャングル奥地で新種の萌えもんを発見 これがさっきの10日のミュウっていう子のことかな。」 「・・・ミュウ・・・なあ、あたしが何か知ってるかもしれない。 っていうか強烈に残ってる思い出にこれは強いつながりがある、手分けして集めよう。 あたしはこっから先を見て回るから、お前は違うとこを頼むよ。」 「うん、わかった。気をつけてね?」 「わかってるよ。そっちも調べ終わったら最初の階段で待ってて。」 そういってサンダーは奥へと進んでいった、一人は場に出してないと危ないからラプラスを出した。 僕は3階を調べて見ることに。するとまた日記を見つけた。 「マスター、日記があるわよ?えーっと・・・。 日記 2月6日 ミュウが子供を生む。 生まれたばかりの子供をミュウツーと呼ぶことに・・・。 何かしら・・・。」 「うーん2月ってことは半年くらい後かな、随分間がとんでるなあ・・・。 サンダーが何か知ってるかもしれないから今手分けして探してるんだ。」 「へえ・・・。」 2階の奥を見ていってるけどあまり詳しい情報が載っている日記はないね。 研究者のくせに写真サンプルも残してないからあたしの記憶の中にいるあの化け物との照合ができない。 ただ見つけた日記を読むとだいたいそれが正解なのがわかる。あたしらでさえビビる化け物。 見つけた日記は生態調査や解剖学みたいなもののまとめかな? ・・・調査記・・・ 萌えもんNO151 ミュウ 新発見萌えもん ギアナにて発見、この個体意外はその場所で発見は出来ず。 タイプはエスパーと分類されるタイプ。驚異的知能を持ち、あらゆる技を覚えてしまう。 攻撃、防御、スピード、体力あらゆる能力に優れており、エスパーの多くの弱点の打たれ弱さも無い。 私はこの萌えもんにあらゆる可能性を見出した。 ・・・・・・・・・ ますます嫌な予感がしてくる、この先にはこれ以上の情報はまったく無いらしい。 邪魔な野生っ子をおっぱらいながら戻る。 「これは日記じゃないけど飼育記録みたいよ、マスター。」 「ありがとうラプラス、えーっと・・・。」 ・・・飼育記・・・ 我々人類を遥かに凌ぐ高い知能をもっているので会話も容易である。 この個体の性格もあり、私をまるで頭の悪い子のように会話してくるときもあり。 高度な悪戯を何度もしてくる。記録用としてのビデオ撮影はものすごく難航したが。 ついにデータにすることに成功した、私はミュウが望んだ物をどれだけ与えただろうか。 ミュウもやはり普通の萌えもんの女の子としてのものがあるようで、要求は世界の菓子等であった。 しかし、全て見越しているような目をいつもしてくる。 おそらく私にひとつ出てきた”ある研究意欲”もすでにわかっているのだろう。 ・・・・・・・・・ 「マスター、映像データが入ってるのって、この後ろのページに貼り付けてあるディスクじゃないかしら?」 「そうみたい、生きてる端末があるみたいだし再生してみよう。」 カカカカリカリカリッ フィイイーン ザザザッ・・・。 「この間言っていた条件はこれで十分だろう。 頼むからちゃあんと姿をだしてくれ、映像に残らない。」 「えー?もっと美味しいもんたくさん頂戴よ、ボクの言うこと何でも聞くんじゃないの?」 「だから世界中からお菓子を取り寄せてやったじゃあないか!このために百数万の金がかかってるんだ。 頼む、後生だ。このまま研究が進まないんじゃ私は泥棒扱いされてしまう。」 「やれやれ、しょーがないなあ。そーら、これでどうかな?ちゃんと姿は出してるよ。 ちゃんとボクを撮れるかどうかは別だけどね、キャハハハッ!」 「くっ、念力でビデオを・・・いい加減にしてくれ。 お菓子ベッドもゲームもなんでも買い与えて、退屈しのぎには十分協力しただろう。」 「しょーがないなー。はい、どうぞ。」 「えー、コホン。新発見の萌えもん、151番目 萌えもんの名はミュウ。 我々人類を遥かに超越する高い知恵をもったエスパー萌えもん。 タイプはエスパーであるがどのタイプの技も覚えてしまう。」 「終わった?じゃーボクのためにおいしいフルコースを作ってよ! キミは作れないからまた有名なシェフ呼んでさ!」 「勘弁してくれ、そういった諸費で君にはそろそろ500万の金がかかるんだ。」 「なんだよー、ボクにはその価値が大いにあるっていったじゃんかよー。」 「純粋な研究費ならいいがこういったことだけで既に80%を占めてるんだ。」 「・・・果たして、本当に純粋なのかは疑わしいけどね。」 「な・・・何を・・・。」 「何動揺してんのー?ただのジョーダンだよ、さあ早くシェフ呼んでよ、お腹が減ったんだボク。」 「・・・わかったよ・・・。」 ザザーッザザッ 「エスパーの萌えもんみたいね・・・なんというかしつけのなってない子。」 「うん、この図鑑が手打ちでデータ打てればいいんだけど・・・そうはいかないからなぁ。 このディスク一応持っていっておこう。」 「この先は何も無いみたいね、いったん戻りましょうか。」 「うん、サンダーももう調べ終わってるかもしれない。」 僕とサンダーは合流できた、ディスクは今見せれないとして。 サンダーが持ってきた調査記とこの飼育記で十分かな。 あとは調べてないのは地下だけだ。 地下室に行くと上の階よりは綺麗な空間だった。 合流するとラプラスが場に出てた、あたしが場にでてないから不安だったのか? 合流した飼育記をみてほんの少しだけ安心する。 菓子を要求か・・・あの化け物からは想像つかないし人間と会話が出来てるあたり。 あの化け物ではなさそうだ、でもここは研究所。逆に新たな予感が出てくる。 心の底から湧き出てくる不安に抗いつつ地下室に向かうあたし達。 「あ、見てサンダー。また日記を見つけたよ。」 「読み上げて見てくれ、あたしはまだこっち探してるから。」 「ラプラスお願い、僕はまだ端末とか調べるから・・・。」 「はい、えーっと・・・。 日記 9月1日 萌えもんミュウツーは強すぎる。 ダメだ・・・私の手に負える存在ではない。」 「ッ!!」 嫌な予感が的中した、このあたしでさえ名前を聞いただけで鳥肌が立つ。 最低最悪の化け物の名前、とんでもない強さに凶暴性・・・。 思い出したくもない昔の記録がどんどんあふれ出てくる。 「サンダー?どうしたの?」 「そうか・・・あの化け物・・・ここから・・・。」 「マスター?サンダーは何を知ってるの?」 「今本人から聞くよ、サンダー、何か知ってるの?」 「お前と会うよりも相当前なんだけど・・・今思い出しても身震いするような そんな恐ろしい化け物に遭遇したんだよ。伝説のこのあたしが心の底から逃げたいって思うような・・・ね。 そいつの事ははっきり脳裏に焼きついてるけど、名前しか知らないんだ、ミュウツーって名前だ。 あたしが唯一圧倒的な負けを体験したのもそのときなんだ。あたし達はその時ばかりは伝説のプライドとか全部捨てて逃げたんだ。 戦った場所は海の上だったけど、どっかに移動してるみたいだったんだ。 研究者・・・ミュウ・・・まさか・・・。」 「えーっとサンダー。見せ忘れてたけどこの日記を見ると ミュウは1人子供を生んで、その子供がミュウツーって言うんだけど。 さっき映像でみたけどそんな凶暴な感じじゃなかったよミュウっていうのは。 「ん・・・確かにその日記とかだけじゃ結びつかないな・・・。」 「マスター、もう少し奥へいって調べてみましょう。」 「そうだね・・・もう少しなにか資料が出てくればサンダーの記録とかにも・・・。」 「正直あたしは怖くてしょうがないよ、伝説がお笑いになる情けない話だけどさ。 でも、調べなきゃしょうがないさ。奥へいこう。」 サンダーが初めて見せた恐怖の表情、冷や汗もかいてたし余程なんだと思う。 でも・・・僕のとこへきてからほぼ完璧に無敗のまさに伝説の強さのサンダーが? ホウオウっていうのに苦戦して帰ってきたときも驚いたけど・・・サンダーが恐怖する? 想像もしてなかった、サンダーが怯えるようなもっと上の存在がいるって事に。 そして一番奥の部屋に入ると滅茶苦茶になってる部屋があった。 書類が飛び散って、機械はバラバラで部屋の壁がまるでキャンディのようにひんまがってたり。 一体ここで何があって、何が行われていたんだろう。 「酷い有様ね・・・この部屋・・・。」 「うん・・・さて、何かないか調べてみよう。」 「ああ・・・気がちょっと進まないけどな。」 あたしとラプラスとこいつでそれらしい日誌を拾い集めてつなげて読んでみた。 なんかこの日記は日付が書いてないんだ。 でもそれは9月の前後だってことがすぐにわかった。 ・・・研究記・・・ ミュウは何故か子供を研究に使う事に了承した。 いいづらい話を正面から言ったのだが私の目をみて少し悩んで承諾した。 生まれたてで意識や物心も定かではない子を実験に使う事にした。 遺伝子研究が進む、この萌えもんは素晴らしい力を秘めている。 もし研究に成功すれば究極の萌えもんが出来るだろう、人の手で。 成長を早める研究も同時にスタートした。 強靭な肉体、超能力を初めとした能力の増強。 私の研究や実験は思うように成功していった。 このころミュウが私を見下す目で見るようになった。 研究の邪魔を一度されたのでさらに地下で研究をする。 プロジェクトチームを集めてさらに遺伝子を操作する。 このミュウ自体の遺伝子が優れているので多少の改変はものともせず。 強力な形で吸い込まれていく、超能力の強さも規定値をオーバーしさらに上昇している。 チームのサンプルのユンゲラーの10倍の数字を出していた。 この頃、ミュウが行方不明になる。 おそらく研究施設から逃げ出してしまったのだ。 再発見の望みが薄いため捜索せず研究を続ける。 チーム員より危険性を指摘され、遺伝子操作などを一時中断。 覚醒する事の無い様薬品投与により長い昏睡状態にする。 操作を一切して以内のにもかかわらず肉体に急激な変化が現れている。 機械に動作記録はない、まさか自分で自分の肉体を形成しているのか? 目をこらして監視したところ何人かの研究員が遺伝子操作をしていた。 しかしそれを覚えていない、異常事態が発生したとすぐ判明。 恐らくミュウツーが強力なエスパーとして洗脳し、自分を構築したのだ。 我々はチームを全員収集し、この萌えもん。ミュウツーを処分する事に決定。 明日には決行し、研究を白紙に戻す予定だ。外部にこの地下研究がもれてはいけない。 日記も手を加え、匿名にすることに。 ・・・・・・・・・ 日記はここで途切れていた。でも数ページ読むだけで何があって、あの化け物との関係がすぐにわかった。 ミュウツーっていうあの化け物はここで人間によって作られた、いや作り変えられた萌えもん。 研究者の身勝手な研究でその化け物が暴れまわったらカントーくらいは簡単に滅茶苦茶に出来るくらいの化け物が出来ちまった。 これだから・・・研究者っていうのは・・・大嫌いなんだ・・・。 一体命を何だと思ってやがるんだ、それにこんなとんでもない・・・もはや兵器を作りだして何をする気だったんだ。 あたしは高ぶる感情を抑えれなかった。 「クソッ!ふざけんな!!」 ビリッビリリッ 「サンダー!?どうしたの、落ち着いて!」 「クソッ!クソッ!よりによって人間があんなとんでもない化け物を!」 「落ち着きなさい!ちょっと!」 バチバチッドガァーン 「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・。」 「あ、危ないなあサンダー。まずは落ち着いてよ。」 「まったく・・・私に当たったらたたじゃすまないのよ?」 「う、ご、ごめんな・・・つい怒りが止まらなくて・・・。 あの化け物にはプライドとか何もかもをブチ壊された。あたしらこそが一番強い萌えもんだっていうのを崩された。 それと、人間の傲慢さとかに改めて腹がたったのさ!」 「私も・・・研究材料として飼育されていたけれど・・・私がもしここで研究されていたらと思うと恐ろしいわ・・・。」 「どうして・・・命を物として見れるんだろう・・・大人って・・・。 ロケット団だってそうだよ・・・どうして萌えもんを平気で殺したり・・・。」 「人間の十八番だろうそんなの、生きるために必要が無くて他の命を消せるのは高い知能を持った生物。 その大部分が人間なんだよ、あたし達伝説とまで言われているのが人里には現れないって取り決めしたのもそういうのがあってこそさ。 こんなとんでもない化け物作られたのは今までにはないけどね。ただいつだって人間はそういうのを作る。 いわば兵器さ、そんなもんを作る頻度が上がってからあたしらみたいなのは人里には姿を出さない事になってたんだ。 これはあたしが生まれるもっともっと前の話だけどね。」 「そう・・・ここで見つけたことは誰にも話さないほうがいいわね。 特にロケット団みたいな連中にはね。おそらく技術として外部に漏れてない、本当はどうかしらないけど。 漏れてないのはこの研究者の最後の良心だったのかもしれないわ。」 「初めっからそんな研究するのが間違いさ、人間なんかがね。 今感じる怖いもやもやは、今もどっかでそいつは確実にいきてるってこと。」 「うう、怖いなあ・・・とりあえず・・・戻ろうか・・・。」 「そうね・・・。」 「そうだな・・・。」 ここで見たものは絶対誰にも言わない、ここの3人だけの秘密ってことにしてセンターに戻る。 僕はすごい恐怖とともに、萌えもんについてまた深く考えるようになった。 命は物じゃない、でも僕は戦いの場に萌えもんを出す立場。 トレーナーとの戦いは健全な野良バトルから公式戦なら安心だけど もしその化け物が僕らの目の前に現れたら、サンダーまでもが命の危険性に晒される。 もし、もしも、そのミュウツーに出会ってしまったとき。果たして僕には何ができるんだろう・・・。 絶対に皆を守りたいし、身を挺してでも守るつもりはあるけど。僕は無力だ。 そんな事を思いながらセンターに向かってた、今日の僕は戦う気分じゃない。 それはサンダーやラプラスもそうなんだろう。 それに、なんか胸の辺りがモヤモヤして。あといろいろ恐怖が心ににじんでた。 あの時の記録・・・1対1ではなくこっちが明らかに有利な状況なのに。 それなのに、伝説のあたしらは負けてしまった。恐怖さえ覚えた。 後ろに存在する敵に怯えながら背を向けて逃げたあの屈辱。 そんな嫌なものを思い出した。こいつに捕まったときも屈辱だったけど。 ミュウツーとの戦いは本当の意味で絶望だった。 まさか、あの敗北が人間の研究者が起因していたことだったなんて。 クソッ・・・!イライラして冷静さを失う恐れがある、あたしは今日は戦うのはやめさせてもらった。 ラプラスも今日の事で乗り気じゃなくなったらしい。 「じゃあ、まだ早いけど今日は休もうか。」 「そうね・・・私はボールに戻るわ。」 「あたしは少し空飛んでくるよ。」 「え・・・サンダー!」 ガシッ 何か、突然ものすごい不安が立ちこめてきて。 外に出ようとしたサンダーの袖をいつの間にかつかんでた。 さっきサンダーがいってた言葉に多分過剰に恐怖を覚えてるんだと思う。 とにかくものすごく怖い、出て行ったら帰ってこないとか。 そんなマイナス思考ばっかりめぐってた。 空飛んで気分でも紛らわそうと思ったらこいつに袖をつかまれた。 何でこいつこんな、なんか泣きそうな顔してんだろ。 さっきあたしがいった、まだどこかでミュウツーは生きてるっていう言葉に恐怖でも覚えたのかな? しばらくそのまんまでいた。ちょっと胸がドキドキする。 「ど、どうしたんだよお前・・・なんで涙ぐんでんだよ。」 「わ、わからないけど。今はサンダーにどこにも行ってほしくないんだ。 なんか・・・すごく不安で・・・怖いんだ・・・。」 「・・・アハハハハハ!どうしたんだよビビりまくって! お前やっぱり16には見えない、もっともっとガキなんじゃないか? ほーらほら、ママの胸にでも飛び込むか?フフフ。」 ギュッ 「え・・・あ・・・え・・・?」 「・・・サンダー・・・どこにも・・・行かないでよ・・・。」 「あ・・・ごめんな・・・あたしの事が心配だったのか。 ごめんな、だから泣くなよ。よしよし、どこにも行かないよ今日は。」 「うん・・・ごめんね。」 「いや、いいよ。どうやら今日はお前を慰めてやんなきゃいけないみたいだしな。 ほら、さっさとベッドに入れよ。」 「うん。」 なでなで 「え・・・サンダー?」 「お前も、グレンであたしが傷ついて帰ってきたとき、こうしてくれたろ? お返しだよ、フフフ・・・。」 「サンダー・・・ありがとう、楽になったよ。」 「お前はそれこそか弱い男だからな、強いあたしが守ってやらないとな! しっかり守られろよー情けない男、アハハハハハ! 情けない・・・かわいい男・・・。」 「僕も・・・強くならないといけないね。」 「違いないけど、焦んなくていいんだよ。 あたしは伝説だから初めっから相当強かったし。今もまだまだ強くなってる。 でも普通の、普通以下にか弱いお前はゆっくり育てばいいんだよ。」 「そうかな?」 「あんまいきなり変わられてもあたしが困る。」 「そうなの?どうして?僕が強くちゃおかしいかな。」 「なんでもないよ、さっさと寝な!」 「うん・・・早いけどおやすみ。」 「ああ、おやすみ。」 サンダーはやっぱり立派だなと思った。 僕が情けなさ過ぎるだけかもしれないけどね。 まだそんな遅い時間になってないけどもう寝ちゃおう・・・。 寝たか・・・こいつ寝るのはやいよな。 全く情けない男。成長でもなんでもさっさとしちまえばいいのにな。 でも・・・でも・・・。 今のお前があたしは一番のお気に入りだぞ・・・。 なんて、恥ずかしいからとても言えなかった。 あたしも寝るか。こいつ泣き虫だから一緒のベッドで見守っててやるか! とはいうものの、やっぱり恥ずかしくて1時間くらい寝れたもんじゃなかった。 ボクの細胞とか遺伝子を使って何をするのかは大体想像がついた。 でも止めるつもりはないね、だってバカバカしいじゃん。 それに、人間は膨れ上がりすぎたね。ボクの子供をまるで兵器にしちゃって大騒ぎだったけど。 そのうちそのおバカな行動が自分達にそのままそっくり返ってくるよ。 それが滅びかもしれないけどさすがにこのボクの遺伝子を使った兵器でもそうだなぁ。 せいぜいカントーをめちゃくちゃにするのが限度だね。 それでも相応しい代償かもしれないけどね、キャハハハハッ。
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前回のあらすじ コイキングたんにライバルあらわる コイキングの修行を一段落終え、先へ進む事に。 俺達はゴールデンブリッジへと向かった。 シゲル「よう!」 うわ、嫌なのでた(;^ω^) 今日はきっと厄日なのだろう。 コイキング「(こいつがマスターの言ってたウザイ知り合いか・・・)」 ピカチュウ「(マスターも大概だけどね。)」 フシギソウ「(そ、そんなことないよ。多分)」 シゲル「こんなとこ、うろちょろしてたのか! 俺なんか強いのすごいの色々捕まえちゃって 絶好調だぜ!」 マスター「そうか、それはよかったな。じゃぁ俺達はあっちに」 シゲル「・・・どれどれ、お前はなんか捕まえた?見せてみろよ!」 ライバルのシゲルが しょうぶをしかけてきた! だああああああああうぜえぇえぇえぇえぇえぇえぇえ。 こいつ絶対通信簿に「人の話を聞きましょう」とか書かれてたクチだろ! ポケ○ペのグリーンを見習えっての。 だが萌えもんバトル。喧嘩売られた以上は買わなきゃならない というわけでピカチュウ!君に決めた! コイキング「お手並み拝見ってか」 フシギソウ「ピカチュウちゃん頑張ってー!。」 シゲルはKYだったりうざかったりするが自信過剰なだけあって それ相応の才能は持ってるからたちが悪い。 以前はお互い日が浅くて大差無かったが今はどうなってることか。 コイキングのデビュー戦はもうちょい後になりそうだ。 ごめんなコイキングたん・・・ シゲル「いけ、ピジョン!あいつの萌えもんを蹴散らしてやれ!」 ピジョン「紅蓮の炎で焼き尽くしてやるんだから!」(CV:釘宮○恵) いや、お前ほのお技使えないだろ。 風に~なびかせ~線を引いて流れるような髪先で敵を刺しそうだ。 にしても、シゲルのやつめ、萌えもんのことしっかり育ててるみたいだ。 恐らくあれは以前戦ったポッポだろう。向こうは覚えてないみたいだが。 マスター「ピカチュウ!おまいの電気ならピジョンを仕留められる! だけど相手のレベルは相当に高そうだ、油断だけはするな!」 ピカチュウ「分かった!(普段もこんな調子だったらいいのに)」 こっちも伊達に訓練はしていない。勝つ自信だってあるんだ。 俺はピカチュウたんを信じるおっおっおっ。 そして戦いの火蓋は気って落とされた。 シゲル「かぜおこしで吹っ飛ばせ!」 ピジョン「このぉ!とんでっちゃえー!!」 ピカチュウ「きゃぁっ!?んぅ・・・こんな風で飛ぶもんか!」 見えた!!!!!!!!!!! じゃねーや。指示ださないとな、うん。 ピカチュウは基本的に打たれ弱い。 ジリ貧にするとこちらが不利になってしまうだろう。 ここは思い切って突っ込ませてしまうのが得策か。 マスター「ピカチュウ!でんこうせっかで構わずつっこめ!」 ピカチュウ「無茶いってくれるわね!ええい!このお!」 ピジョン「うそっ!?突っ込んできちゃった!」 どかっ! ピジョン「いたっ!」 でんこうせっかは見事ピジョンにクリーンヒット。 決め手には至らなかったが相手にダメージを与えられた。 先手を取られたのは痛かったがこれで痛みわけだ。 ピジョン「いたた・・・やったわね!このぉ!」 シゲル「おい!うかつに突っ込んだらだめだ!」 これはラッキー、ピジョンが逆上してこっちに突っ込んできた。 いまさら指示をだしたってもう遅いぜシゲル! マスター「今だ!でんきショックを決めてやれ!」 ピカチュウ「えーーい!」 バチバチッ! こうかはばつぐんだ! ピジョンはたおれた。 ピジョン「うううー・・・」 シゲル「・・・っ!なんでむやみに突っ込んだんだ!」 ピジョン「うるさいうるさいうるさい!だってあいつ私に攻撃を当てたんだもん!いたた・・・」 ピジョンもシゲルも自信があったのだろうが、 予想外の反撃に戸惑った結果ああなってしまったようだ。 だけど無造作に突っ込んできてなかったら長期戦にもちこまれて こっちが危なかったかもね。ピジョンが⑨でよかった。 マスター「ナイスだピカチュウ! 先手はもらったぞ、シゲル」 シゲル「・・・へんっ!まだまだこれからさ! いけ!コラッタ!」 うははははシゲルざまあwwwwww 体育じゃ勝てなかったが萌えもんバトルなら負けないぜ! どうやらさっきのピジョンより弱いようだな。 そしてシゲル先手を取られたせいか動揺している、この勝負もらった! マスター「よし、ピカチュウ!その調子で次もいくぞ!」 ピカチュウ「オッケー!」 結論から言うとコラッタはピカチュウが見事倒した。 コラッタはピカチュウのでんじはとでんきショックのコンボで あえなくノックアウトとなったのだ。 さすがに疲弊しているピカチュウにそのまま戦闘を任せるわけにもいかず 俺はフシギソウに全てを託した。 ・ ・ ・ シゲル「あーっ!こいつセコイ真似を!」 マスター「ふふん、知略的な作戦と言いたまえ」 シゲル「なんだよー!ムキになっちゃって!・・・わかったわかった!」 やどりぎ+ねむりごなでハメて楽勝でしたサーセンwwww べ・・・別に途中でめんどくさくなったわけじゃないからね! シゲル「へへーんッ! 俺、マサキのうちに行って珍しい萌えもん たくさん見せてもらっちゃったもんね! おかげで萌えもん図鑑のページが増えたぜ!」 マスター「ちゃんと捕まえないと図鑑埋まらないぞ?」 シゲル「うっさい! ・・・なにしろマサキは有名な萌えもんマニアだからな! パソコン通信の萌えもん預かりシステム! あれもマサキが作ったんだぜ」 コイキング「もう知ってるぜ」 シゲル「・・・お前も作ってるんなら一度お礼にいけば?」 あ、こいつ明らかに聞いてないフリしやがった。 シゲル「おっと、道草食ってる場合じゃないぜ!じゃな、バイビー!」 そう言ってシゲルは去っていった。 しかしシゲルにまたも一足追い抜かれていたか。 そこんとこ悔しいのう。 マスター「さて、俺達はこれから・・・」 シゲル「そうそう!俺にいつも先を越されてカワイソーだからこれを恵んでやるぜ!」 うお、いきなり戻ってきた。 この野郎、痛いところを突きやがって。 ってなんだこれ。 シゲル「噂好きのお前にはそれがピッタリだぜ!俺様は他人なんかに興味ないからなー じゃな!今度こそバイビー!」 そういって今度こそシゲルは去っていった。 もう二度とくんなバーロー。 ピカチュウ「嵐のように現れて嵐のように去っていったわね・・・」 コイキング「むしろ荒らしだな」 マスター「同意」 フシギソウ「えっと、先に進むんですか?」 マスター「うんにゃ、その前に萌えセンでひとやすみだ」 勝つには勝ったがこちらも無傷とはいかなかった。 フシギソウはやどりぎを初弾外してしまいひのこに 当たって火傷を負ってしまった。 俺達は萌えもんセンターに引き返すこととなったのだ。 シゲルに会うと必ず出鼻をくじかれるな・・・。 続く・・・
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「さて、せっかくの非番だ、二人の特訓でも・・・ ん?何だこの紙。 『Q&ATime』? 誰だこれ書いたの?」 「筆者じゃないですか? ちょこちょこと裏設定決まってきたから話させたいみたいですし」 「また面倒なことを・・・ しょうがない、ちゃっちゃと済まそうか 以下 ヒ=ヒロキ リ=リーフィア 火=ヒトカゲ ヒ「さて最初は・・・」 Q 1、萌えもんセンターでの仕事中の服装は? ヒ「これか。もちろん制服がある。 男女で色合いとデザインがちょっと違うんだ」 リ「受付でジョーイさんが着てるのがそれですね」 ヒ「あれはちょっと特殊なんだが・・・そうだな。中で仕事を手伝ってる萌えもんたちも、性別にあわせて専用の制服を着てる。 俺もちゃんと持ってるぞ。 ちなみに完全にオーダーメイドな」 火「おーだーめいど?」 ヒ「職員一人一人専用の特注ってこと。 萌えもんたちの中には、本人達が何もしなくても素手で触ると危ない子もいるからな。 具体的にはベトベター、ベトベトンにブーバーといったところか。 そういう子の手当てをしたり、あるいは知らない人に触られるのを嫌がって暴れる子に怪我をさせられないように、 制服は同時に防護服の役目も果たしてるんだ。 サイズが合わないと思わぬ怪我に繋がりかねないからな、それを防ぐためにオーダーメイドにしてあるんだ。 下手すると防弾チョッキより防護力は高いかもしれない」 リ「でも、直接触らなくても手当てに危険が伴う子もいますよね」 ヒ「まあな。ドガースとかモルフォンあたりかな。 そういう子の治療時は勿論ガスマスクとまでは行かないが、防護マスクをつけて手当をする。 ちなみに上に上げた子らも含めて、自分のトレーナーにはそういう何もしなくても危ない、という特徴を示さないようだ。 野生なら誰が触っても危ないんだけどな。ボールに入った時点で何かされてる様だ」 火「でも、ジョーイさんの制服とかは半袖だったりしてない?」 ヒ「受付のジョーイさんか。後ろで萌えもんの治療に回る職員は男女問わずに長袖・長ズボン・手袋着用が義務なんだ。 怪我の消毒とかそういうことをする仕事だから当然だな。 受付の制服も同じ素材で出来てるが、スカートだからあれで裏には回れないな。 ちなみに接客を兼ねるから見た目も重視したデザインのものが採用されているらしい。 さっきちょっと特殊って言ったのはそのあたりのことだ」 リ「男性でも受付は出来るんですか?」 ヒ「出来るはずだ。といっても、今まで聞いたことはないな。 ・・・さて、次はなんだ?」 Q2、萌えもんセンター職員の給料は? ヒ「生々しい質問だな・・・。とりあえず、決して安くは無い、とだけ。 あと俺のようにあちこち渡り歩いてるような職員は普通はいないんだが、何かの都合で他のセンターに応援にいくことはある。 そのときも基本、給料は登録したセンターから支払われる。 俺の場合はタマムシのセンターだな」 リ「労働時間に応じた給与なんですよね」 ヒ「そりゃ勿論。月給制で、口座に振り込まれてる。ちなみに地方公務員でもあったりする。カントー中の萌えもんセンターで資格は共通だからな」 火「じゃぁ、他の地域は?」 ヒ「カントーを出たことが無いから確かめたわけじゃないが・・・ 確かジョウトやホウエンの萌えもんセンターで働くにはカントーでの資格だけじゃ足りなったハズだ。 他に何が要るんだったか・・・すまん、関係ないと思ってたから覚えてない」 リ「そういえば、ニビジムでの初挑戦で負けたときはどのくらい払ったんですか?」 ヒ「普段必要以上の金は持ち歩かない主義だからなぁ。持ってたのが4万ちょっとだから・・・2万と少し、だな。 タマムシで暮らしていた頃から特に大きな買い物なんてしなかったし、これといった趣味もその頃は無かったしな。 大体口座には・・・こんな感じだ」(通帳の残額を見せる) リ・火「「!!!!!」」 ヒ「細かい金額はナイショ。さて次の質問は・・・」 Q3、各町の距離は? ヒ「これは難しい質問だな・・・まぁ、どの街とどの街の間かによって思いっきり違うな。 まぁ、これから俺達が向かうハナダはニビからは徒歩なら数日は掛かるだろう。 逆に俺の住んでいたタマムシを含めた4つの街とヤマブキとの距離は大分近い。 これはそもそも近くなければ地下通路で夜を越すことになりかねないからな。 それに夜になると地下通路でトレーナーが寝泊りする様子もホームレスみたいで見た目がよくないし。 とは言っても、結局は筆者の配分しだいだな。今のところ、街と街の間の話は書く予定が無いらしいから、 えらくあっさり次の町にいくことになりそうだ。 リ「トキワからニビなんて、私達のLvが10近く上がってるのに、手抜きですね」 火「出番減らすなー!ニビでもハナダでもジム戦じゃ活躍できないのにー!」 ヒ「そういうな、リーフィア。それにヒトカゲもヒトカゲなりにニビジムで頑張ったろ? それにヒトカゲ、お前はハナダシティで進化の予定だそうだ。最もジム戦じゃないらしいけど」 火「進化?わーい!もっと強くなるんだよね!・・・でも、ジム戦じゃないなら何処で?野生相手?」 ヒ「それについてはハナダ編をお楽しみに、とのこと。っと、話がずれてるな。 次はどんなんだ?」 Q4、ヒロキの家族は? ヒ「あー、家族な・・・。とりあえず俺は一人っ子で、両親ともに元気。ただし俺が萌えもんセンターに無事就職したのをきっかけに、 夫婦水入らずで大旅行してくるといってそれっきり。実に適当だな。少なくともカントー内にはいないだろう」 リ「お会いしてみたかったです・・・」 火「じゃあ、他に親戚は?」 ヒ「ヤマブキに叔父がいる。小ぢんまりとした格闘道場を開いてて、俺も小さな頃はそこに通って肉体作りや格闘技術を学んでいたな。 俺が通わなくなってすぐくらいにヤマブキのジムの座を巡ってナツメと戦って負けた、という話だ」 火「じゃあ、もしその時ご主人様の叔父さんが勝ってたらご主人様はジムリーダーの・・・ええと・・・?」 ヒ「甥だな。まぁ、理屈としちゃそうだけど実際は叔父さんには悪いけど万に一つも無かったと思う。 叔父さんは自分達自信とともに鍛える方針で格闘萌えもんを扱ってたけど、ナツメはエスパータイプの使い手だからな。 ナツメの萌えもん相手に先手を取れる萌えもんがいなかったみたいだし、かなり一方的にコテンパンだったって聞いたよ」 リ「では、マスターが私が進化したばかりのときに守ってくれたのも・・・」 ヒ「あれか。萌えもんセンター職員の義務として護身術を身につけるってのもあったが、叔父さんに仕込まれてた分が大きい。 自慢じゃないが、ちょっとした武器を扱って戦うのもそれなりにできるんだぞ。 さて、次は?」 Q5、ヒロキの好みの異性のタイプは? ヒ「・・・・・・・・・」 リ&火「「・・・・・・・・・」」 ヒ「・・・あー・・・・・・」 リ&火「「じー・・・・・・」」(興味津々) ヒ「うーあー・・・その。なんだ」 リ&火「「ふんふん」」 ヒ「つまり・・・」 リ「はっきり答えて下さい!」 火「さあ!ご主人様の好みのタイプは!?」 ヒ「未設定!」 リ&火「「・・・・・・・・・」」 ヒ「・・・・・・・・・」 リ&火「「・・・じとーーー」」 ヒ「いや、まあ、あれだ、うん。 つ、次、次!」 Q6、今までにヒトカゲやリーフィアと萌えもんセンターに止まってるけど、何も起きなかったの? ヒ「!!!こ、これは・・・また答え難い・・・」 リ「そういえば、マスターはいつになったら私と一緒にお風呂に入ってくれるんですか? タマムシジムにいた頃に、仲のいい者同士なら一緒にお風呂にも入るって聞きましたよ?」 ヒ「それは同性同士の場合だ。性別が違うんだからしょうが無いって」 火「でもあたしは一緒に入ってるよね?」 リ「私より・・・ヒトカゲちゃんのほうがいいんですか・・・?マスター・・・」(涙目) ヒ「待て待て、違うって!ヒトカゲは尻尾の火が消えると不味いから、一人で入ってて何かあったらと思ってだな・・・ ・・・ええい!これにて第一回Q&ATimeは終了!次はハナダでお会いしましょう!」(脱兎のごとくどこかへ駆け出す) リ&火「「あーー!逃げるなーー!」」(慌てて追いかける) 終わり。
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アキラがトキワジムに腰を落ち着けて約半月。 クリム主導の鍛錬(当然、マスターも鍛える)に慣れてきた頃、アキラ宛に一通のメールが届いた。 『Trust and distrust』 「マサキから呼び出しだって?」 朝練を終え、少し遅めの朝食を摂りながらクリムは聞く。 アキラはというと、半分死にかけの状態でそれに答えた。 「あぁ……なんか、近いうちにノッサとユキメさんとスイクン連れて来てくれって……何の用だろう」 「あー、んじゃアレだな。この辺じゃ珍しい萌えもんのデータが欲しいんだろ」 「萌えもんのデータ?」 意味がわからず、首を捻るアキラ。 その様子に苦笑しながら、クリムは話を続ける。 「お前、マサキについてどのくらい知ってるんだ?」 「あー……直接の面識は無いし、パソコンでの萌えもん預かりシステムの開発者ってくらいか」 「ま、一般人の認識としちゃそんなもんか」 「?」 「いやな、マサキは萌えもんマニアなんだよ。預かりシステム作ったのも、色々な萌えもんのデータが欲しいからって話があるくらいだ」 「データねぇ……」 アキラは怪訝な表情をしながらコーヒーをすする。 「……変なことに使うんじゃないだろうな」 「その辺は大丈夫だろ。俺はあいつと会ったことあるけど、悪いやつじゃなかったぜ」 「まぁ、クリムがそう言うならそうなんだろうけどな」 「お、んじゃ行くのか?」 「そうだな……相変わらず放蕩してるスイクンが見つかり次第行くか」 そう言って食事を終えたアキラが立ち上がった時。 突然彼の背後から、底抜けに明るい声が響いた。 「あっるじっ様ーっ!呼んだ?」 「ってうぉあ!スイクン!?」 「……前にも思ったが、ホント一口に伝説っつっても色んな性格の奴が居るんだな」 「むむむっ、失礼な。あたしこれでも伝説よ?伝説なのよ?」 「じゃ、せめてそれっぽく振舞えばいいだろうに……つか、今度はどこに行ってたんだ」 「んとね、灯火山のてっぺん」 「ってファイヤーのとこかよ!?」 「そーそー。あ、そういえば聞いてよ。ファイヤーってばまた美味しいお酒隠してて……」 「……なぁアキラ。仮にもファイヤーのトレーナーとして色々と言いたい事があるんだが」 「わかってる……つか注意もしてるんだが、もう数十年はこういう関係だそうだしなぁ」 「「……はぁ」」 「そんでね……ってちょっと、聞いてる?」 数日後。 指定のメンバーの他にデル、メリィ、ホウを連れ、一行は岬の小屋の前に立っていた。 「ここがマサキの家か……」 「なんか、予想してたのと違うね」 「そうですね。預かりシステムの開発者という程ですから、もっとこう……」 「ほらほらみんな、ひとんちの前でお喋りしてても仕方ないっしょ。ってことでおじゃましまーっす♪」 「僕、スイクンさんは少し自重したほうがいいと思います……」 そんなこんなで上がりこんだ先には、エーフィ族の少年が一人。 「ん?あんたら誰や?」 「ああ、俺はトキワジムのアキラ。マサキって人に呼ばれて来たんだけど」 「おお、あんさんがアキラか!わいは見ての通りエーフィ……ってちゃうちゃう、萌えもんマニアのマサキや!」 「……へ?」 一同、硬直。 それもそうだろう。皆、マサキが萌えもんだなどとは夢にも思っていなかった。 「何やその反応は。あんさんら信用してへんな?」 「信用って言われても……」 「ねぇ……?」 「ホンマやって!実験に失敗してしもうて、萌えもんと一つになってもうたんや!」 必死で訴えてくるエーフィ(マサキ?)。 その様子に、もしかしたら本当にそうなのではないかと思い始めた時だった。 「せやから、わいはこの機械に入るさかい。そこのパソコンで……」 「……ハ~マ~?」 「……ってその声はムドォ!?何でや!?何で今ここに居るん!?」 いつのまにか彼の後ろにはブラッキーの少女が肉薄しており、振り向いたエーフィの顔面をぐわし、と掴むと。 そのまま握り締めて持ち上げていた。 要はアイアンクローである。 「あんた……悪戯も大概にしなさああああああいっ!!!」 「ああいがががががががががくぁwせdrftgyふじこlp!?!?!?!?!?」 エーフィは暫く声にならない悲鳴を上げていたかと思うと、泡を吹いて気絶した。 そしてブラッキーはポカーンとしているアキラに向き直ると、頭を下げた。 「ごめんなさい、うちのが変なこと言ってたみたいで」 「あ、え、いや、別にいいけど。君は?」 「あ、そうだった。申し送れました。わたしはマサキ兄ちゃんの助手の一人で、ムドっていいます。そこのバカはハマ。あんまり認めたくないですが、わたしの双子の弟です」 「そうか……マサキは今は居ないのか?」 「はい、でもすぐに戻ると思いますよ。よろしければ皆さん、奥でお待ちになりませんか?」 「なら、お言葉に甘えようかな」 「わかりました。こちらへどうぞ」 そして奥に通されて数分後。 「やー、君がアキラか。わいがマサキや。よろしく!」 「あ、どうもよろしくお願いします。マサキさん」 「硬いなー、わいもアキラって呼ぶけん、わいのことも呼び捨てでええで」 「そのほうがいいならそうさせてもらうよ、マサキ」 「おおきに。ほな早速、データ取らしてもらうで。その間そこのパソコンで、わいの萌えもんコレクションでも見てき。データしか無いけどな!」 そういって、マサキは三人を連れて別室へと去っていった。 残された四人は、勧められた通りにパソコンで萌えもんのデータを見ることにした。 「……御主人様!見てください、これ!」 「なんだなんだ……ヘルガー族のデータか」 「はい。このデータによりますと、私の種族の平均的な胸の大きさはAらしいですよ!別に私が特別小さいわけじゃないみたいです!」 「……でもデルちゃん、身長の平均は160cmよりも上だよ」 「……っ!」 「……それに、デルのサイズはAA。平均より全然下。しかも、種族的に成長は見込めない」 「Σ( ̄□ ̄;)」 「うわ、ホウちゃんキッパリ言い過ぎ……」 「まぁ、何だ。デル……あんま気を落とすな。俺は嫌いじゃないぞ、小さくても」 「うぅ……御主人様の優しさが地味に痛いです……orz」 「これは……デンリュウ族のデータか」 「え、見せて見せてー!」 「……普通ですね」 「……人間と殆ど変わらないな」 「……面白みが無い」 「えー……普通でいいよぉ」 「そこはほら、話のネタにならないじゃないですか」 「……読者も、読んでて面白くないはず」 「ホウ、あんまメタな話はナシで頼む」 「んで、これはヨルノズク族のだな」 「……おっきいね」 「……(ギリギリ」 「……それほどでもない。普通」 「お前のサイズでデル達に普通って言っても嫌味にしか聞こえんからな。種族内では普通でも」 「くぅ……飛行タイプの種族の方々は何故皆胸が大きめなのでしょう……」 「一説には、羽ばたく時に胸の筋肉を使うから、その近くに栄養分となる脂肪を溜め込むようになっているとか何とか」 「どこの誰がそんなこと決めたんでしょうね……」 「……多分、トーヨー史に詳しくて胸とお尻が大好きでピジョットが嫁の人」 「だからメタな話はよそうか」 ……十数分後。 妙に生き生きとしている三人を連れて、マサキが戻ってきた。 「やー、ホンマにおおきに!……どないしたんやお二人さん、えらい落ちこんどるけど」 「いや、ちょっとな……それよりもそっちこそどうしたんだ?」 アキラが聞くと、ユキメが柔らかく笑いながら答えた。 「実は、データ取りのついでにリフレッシュもしてもらったんですの」 「リフレッシュって、どんな?」 「そうですわね、私の場合は氷雪浴とでも言いましょうか……仮想とはいえ、久しぶりに一面の銀世界に触れられて素敵でしたわ」 「へぇ……ノッサやスイクンも?」 「はい!僕は全身のマッサージと整体みたいのをやってもらいました!」 「あたしも、好きなだけお酒飲めたしさいっこー♪」 「はは、喜んでもらえたなら何よりやわ」 後の部屋から「何やこの額はー!?」「伝説のデータと引き換えなら安いものって言ってたわよ」という声が聞こえてきたが、アキラはとりあえず今は気にしないで後でスイクンを〆ることにした。 「色々と世話になったみたいだな。さんきゅ」 「えーってえーって。ところでアキラ、帰りにハナダ寄る用事ある?」 「ハナダ?まぁ折角だしカスミさんに挨拶くらいはしてこうかと思ってるけど」 その答えを聞くと、マサキは真面目な顔になって言った。 「……せやったら、なるべく寄り道せーへん方がええで」 「……なにかあったのか?」 「あったっちゅーか、現在進行形やな。実はな……」 マサキの話を要約すると、こうだ。 先の萌えもんの暴走事件以来、被害を受けた市民の間で萌えもんに対する不信感が強まってきている。 また、詳細が伏せられていることから、この事件自体が萌えもん協会が起こした不祥事ではないか?と勘繰る者まで出ている。 それを受けて「全ての萌えもんは管理されるべきである」という思想を持つ市民団体と、ハナダジムとの間で何度か衝突があった。 ……それらの話を聞いたアキラは、完全に面食らっていた。 「んな、ばかな……あの事件の顛末は詳細にした方が混乱するからって伏せられてたのに」 「ま、市民の感情も理解できへん訳やないがな。仲のよい隣人やと思うてたら、突然暴走して家を壊され、傷を負わされ……人によっては家族を奪われとる」 「だからって……その状況から救ってくれたのも萌えもんだろうに!」 「せやな。せやけどそうも思わん連中も居るっちゅうことや。気つけとき」 「……ああ、情報ありがとう。またな」 そうして、アキラはマサキの家を後にした。 その後、ハナダジムへ飛ぶこと数分。 降り立とうとすると、なにやらジムの前に人だかりができているのが見えた。 「なんだあれ……まさか、マサキの言ってた市民団体ってアレのことか?」 「……アキラ君、どうする?」 「そうだな……人目につかないように、ジムの裏に降りるぞ。ちょっと様子を見よう」 ハナダジム前。 そこでは市民団体が一人の少女を取り囲んでいた。 もっとも、取り囲まれている少女も怯んではいない。 胸を張って腕を組み、彼らを正面から睨み返している。 ピリピリと張り詰めた空気の中、均衡を崩したのは少女……ハナダシティジムリーダー・カスミのほうであった。 「あんたたちねえ……いい加減な言いがかりはもうやめてもらえないかしら?」 「言いがかりだと!?」 「言いがかりよ!あれはロケット団残党による犯行で、ちゃんと協会が派遣したトレーナーが止めてきたって報告があったでしょ!」 「嘘をつけ!自分たちに都合が悪いからって隠すな!」 「勝手な妄想はやめなさい!それに全萌えもんを管理するですって?バカらしい、彼らの意思はどうするって言うのよ!」 「奴らの意思なんか関係ない!我々の安全のためには、全てを管理する必要があるんだ!」 「そんなことが許されると思って……!」 「うるせぇ黙れ!協会の犬風情が!」 そう吼えた男がカスミに石を投げつける。 反射的に自らをかばうカスミ。 だが、その石は見えない壁によって弾かれた。 「な、何だ!?」 「おいおい……女性一人を取り囲み、挙句石を投げるとか、あんたら人として恥ずかしくないのか」 「誰だてめぇ!出て来い!」 「言われなくとも……っと」 罵声に応えるように、屋根の上からヨルノズクを伴った青年が降りてくる。 アキラとホウである。 二人はカスミと人だかりの間に立ちふさがり……背後から怒鳴られた。 「ちょっとあんた!突然割り込んでなんのつもりよ!部外者はどいてなさい!」 「ちょっ……部外者は酷いな、知り合いが囲まれてたからマズいと思ったのに」 「知り合い……って、ああああああっ!あんた、うちの子たちをヘルガー一人でボコしてバッジ取ってったナメ男!」 「……流石にその物言いは傷つくんだが」 「うっさいわね!相性良い筈の炎タイプの子にジムバッジ戦とはいえ3タテストレート負け食らったあたしのプライドの方が傷だらけよ!」 突然繰り広げられた喧嘩(というには一方的だが)に面食らう市民たち。 が、延々と彼らをスルーして続けられるそれにとうとう先の石を投げた男が食いかかった。 「てめぇ、ナメやがって……!ただのカッコツケならどいてろ、怪我したくなかったらな!」 「だから知り合い……つか一応関係者なんだな、これが」 「は?あんた、とおりすがりのトレーナーやってたんじゃなかったっけ」 「ちょいと思うところがあってな……今はトキワジムでサブリーダーやってる。今日はその挨拶も兼ねて来たんだけどな」 「なによそれ、聞いてないわ!」 「だから今日言いに来たんだって。それに書類には書いてあっただろうに」 「顔は覚えてたけど名前まで覚えてないわよ!」 「さいですか……」 と、再び始まる漫才(?)。 そんな時、人だかりの外側がガヤガヤ言い出したと思うと、すっと道ができて一人の男が通ってきた。 「まあまあ皆さん、そんなに熱くならないでもよろしいでしょう」 「ら、ラーク様!?」 「様付け……?カスミさん、彼は?」 「……奴らの幹部よ。面倒なのが出てきたわね」 そういって嫌そうな顔をするカスミ。 そんな彼女に、男……ラークはうやうやしく挨拶をした。 「これはこれはジムリーダー殿。ご無沙汰しております」 「一昨日ぶりのどこがご無沙汰なんだか。顔も見たくなかったわ」 「おやおや、嫌われていますね。そちらの方は……見ない顔ですね」 「まぁ俺は新参だし、リーダーでもないから当たり前か。トキワのリーダーの補佐をやってる」 「なるほど、あなたがあのトキワの……こちらから挨拶しに行く手間が省けましたよ」 「挨拶ね……あんたは何者なんですか?」 「おお、これは失礼いたしました。わたくし、アッシュ団幹部のラークと申します。以後、お見知りおきを」 「んで、どうしてこうなってるのか説明してもらえないですかね?」 「どうしてもこうしても、彼女が我々の言葉に耳を傾けて頂けないのがいけないのです」 「誰があんな話をマトモに聞くもんですか!萌えもんがかわいそうじゃないの!」 「ですが、次同じようなことが無いとも言い切れません。そんな時、あなたたちは街を護れるのですか?」 「そんなの、当たり前じゃないの!」 「ええそうでしょう。当たり前です。『護れるはずがありません』」 「っ!」 「おい、どういうことだ!」 「今回の暴走のときのこと、ご存じないのですか?リーグがあるからとジムを空け、肝心なときに不在。 挙句戻ってきた後も、ヘタな戦いをして悪戯に被害を増やす。 さて問題です。『今回護れなかったのに、次は護れるという根拠は何でしょう?』」 「うるさい……うるさいうるさい!もっと勉強するし、対策だって考えるわよ!」 「しかし、その対策に意味は無い。なぜなら、事件を起こしたのはあなた方協会……無論、リーグ中に事件があったのも自然に各地を手薄にするため」 「違う!そんなのデタラメよ!」 のらりくらりと語るラークに、過熱していくカスミ。 見ていられず、アキラは間に割り込んでいた。 「カスミさん、一旦落ち着くんだ。確かに奴の言ってることはデタラメだけど、デタラメだという証明ができないんじゃ仕方ない」 「それは……そうだけどっ!」 「いいから。とにかく、こうやって話してても不毛だし……これ以上文句付ける気なら、相手になるぜ?」 そう言ってアキラはボールに手をかけ、ホウは一歩前に踏み出る。 が、ラークは表情を全く変えずに一歩前に出た。 「……おい、何のつもりだ?」 「おやおや、我々の話を聞いていなかったのですか?我々は萌えもんによって被害を被った者。故に、萌えもんを連れてはおりませんよ?」 「だから何だってんだよ?」 「いいえ、何も。ただ……丸腰の相手に萌えもんで攻撃を仕掛けるほど、貴方も愚かではないでしょう?」 「……なるほどね。ここで実力行使に出れば、その時点で『萌えもんが人間に害を為した』証拠が取れるって寸法か」 「人聞きの悪い。私はただ単に戦う意思は無いと言っているに過ぎません」 「戯言はもう十分だ。んで、どうすんだよ」 「……これでは埒が明きませんね。本日のところはこのくらいにしておきましょう。皆さん、解散です。お疲れ様でした」 ラークがそう言って手をたたくと、蜘蛛の子を散らすように市民達は去っていった。 それを確認して、ラークは再びアキラ達にその能面のような微笑を崩さずに「では、御機嫌よう」と挨拶すると、何事も無かったかのように去っていった。 残されたのは、アキラ、ホウ、カスミの三人だけ。 「……アキラ君」 「何だ?」 「疲れた……」 「お前、もうちょっと空気読んで発言してくれ……」 「……戻ってていい?」 「いいよ、お疲れ……カスミさん?」 ホウをボールに戻し、アキラはさっきから黙ったままのカスミに声をかける。 カスミは今にも泣きそうな表情で、ギリギリと歯を食いしばっていた。 「あの、謂れの無いこと言われて悔しいのはわかります。でも……」 「違うのよ……全部、事実よ……」 「え?」 「あたしがトレーナー引き連れてリーグ行ったのも……建物ごと暴走萌えもんを押し流したのも……事実だわ……言い返せなかった……ッ!」 「カスミさん……」 「ゴメン、あんたにつっかかったりして……あと悪いけど、今日は帰ってもらえる?ちょっと、落ち着いて話できる気分じゃないわ」 「……わかりました。でも何かあったら連絡してくださいよ。俺は当然、クリムだって、きっと力になってくれるはずですから」 「……ありがとう。あとなんか堅苦しいから、敬語はやめてくれる?年だって大して違わないでしょ」 「それ、マサキにも言われたな……了解、カスミ。これでいいか?」 「OK。じゃ、ね」 「ああ」 そうして二人は別れ、それぞれの帰るべき場所へと帰るのだった。 「ただいまー……あー、疲れた」 トキワジムに戻るなり、アキラはレストルームのソファに倒れこむ。 奥からクリムとシャワーズが、淹れたてのコーヒーを持って来てアキラに差し出した。 「お疲れ様です。どうぞ」 「ああ、さんきゅ……あー、ったく参るなぁ」 「お疲れ。つかどうした。やたら遅かったが、何かあったのか?」 「何かも何も……エラい奴らに会った」 そう前置きして、アキラはハナダであった事を話した。 その話が進むにつれ、クリムは渋く、シャワーズの方は悲しげな表情になっていく。 「……ってことがあったんだよ」 「アッシュ団……か。ったく、漸くロケット団を潰して落ち着いたと思ったらこれだ」 「それにしても、あの事件でそれほどまで萌えもんに不信感や危機感を感じている人々が居たなんて……」 「まぁ、ハナダシティはあの事件で最も大きな被害を受けてるからわからないじゃないけれど」 「にしても動きが早いな。ロケット団の元傘下か、それとも似たような対抗勢力だったのか……どっちにしろ、放ってはおけないな」 コーヒーを飲み干し、クリムは立ち上がる。 それを追う様に、アキラも立ち上がった。 「けど、挨拶が省けたってことはこっちにも勢力伸ばすつもりだろうし、迂闊には動けないぞ」 「いや、大丈夫だ。こっちにはリーダークラスの人間が二人居る」 「マスター、それってもしかして……」 「ああ。俺かアキラ、どっちかがジムを守り、どっちかが捜査する。これならいけるだろ」 「なるほどな……確かに、俺たち二人で防衛しなきゃならない敵なんてそう居ないか」 「居たとしたら、それこそミュウツークラスだろうし。その時は四天王の応援要請もするさ。折角近いんだしな」 「あはは……」 そんなクリムの物言いに、アキラは苦笑した。 「にしても、相手が萌えもんを連れていないとなると厄介だな。押しかけられてもこっちからは手出しができん」 「最悪、門を閉めて立てこもるしかありませんね」 「それにもう一つ気になることがある。連中、全萌えもんの管理っつってたんだろ?具体的に何するつもりなんだ?」 「言われてみれば……そもそも現状のトレーナーと萌えもんの関係だって、言い方は悪いが萌えもんを管理してるようなものだし」 「全萌えもん、と言っているくらいですから、野生の存在を認めないということでしょうか」 「それとも、今のトレーナーと萌えもんの関係をより人間優位に変えていくつもりか……あるいは、両方かもな」 「……私、怖いです。もし本当に彼らの言うような世界になってしまったら、私とマスターの関係も……」 「大丈夫、変わらねーよ。そもそも、そんな世界にはさせねえ。シャワーズ、俺を信じろ」 「マスター……」 「シャワーズ……」 クリムの言葉に、瞳を潤ませるシャワーズ。 見つめあった後、瞼を閉じたシャワーズにクリムが口付け……ようとした所でアキラは咳払いをした。 「あー、ゴホン。お二人さん、そういうのはせめて二人でいる時にやってくれ。俺一人置いてきぼりじゃねーか」 「へ?あ、う、あ、ごごご、ごめんなさいいぃぃぃっ!!!」 「なんだアキラ、混ざりたいならそう言えば混ぜてやっぞ。当然、制限つきだが」 「マ、マスター!?何言ってるんですかぁっ!?」 「誰が混ざりたいと言った。つかシャワーズが沸騰しかけてるがいいんか」 「無論だ。こうなってるシャワーズも可愛いだろ?」 「か、か、かわ、わ、わはぁぅ……(プシュー」 「あ、のぼせた」 「やれやれ、しゃーねぇ。アキラ、俺はとりあえずシャワーズ寝かせてくるから後片付け宜しくな」 「おめーの事だから寝かせてくるだけじゃ済まないんだろーな……まぁいいや。仲良くしてこい」 クリムがシャワーズを抱き上げて去っていくのを見送りつつ、今夜はどうデル達を可愛がってやろうかと想いを馳せるアキラだった。 ほぼ同じ頃、カントー某所。 嫌らしくない程度に豪華な部屋に、二人の男が居た。 片方はいかにもビジネスマンといった出で立ちの若い男。 もう片方はぼさぼさの頭にくたびれたシャツ、薄汚れた白衣という、如何にも研究員然とした老人だった。 若い方の男は読んでいた書類を机に置くと、老人の方に視線を向けた。 「なるほど、開発のほうは順調のようだね」 「ええ、そうですとも。何せ、理論と根幹の設計だけは既に出来上がっていましたからなぁ」 「素晴らしいね。これが完成すれば……フフフ、世界を変えられるだけの力が手に入る」 「わしゃ力なんぞ興味ありゃしませんが……ひひひ、研究さえ続けさせとくれるんならいくらでも協力しまさぁ」 「勿論さ。じゃあ早速だけど、これの試作品のテストをしたいね」 「でしたら、お月見山なんぞどうでしょ?」 「お月見山かい?」 「ええ、あの山には珍しい萌えもんの集落があるという噂。そこの住人ならば……試した後、高く売れるかと」 「フフフ……なるほど。では早速手配するとしよう」 「人選はどうなされますかぃ?」 「僕が今決めよう。そうだな……バージニア、ケント、フィリップの三人を向かわせろ」 「わかりました、伝えときまさぁ」 「宜しく頼むよ、グレイ博士」 「こちらこそ、シガー社長」 そう言葉を交わし、博士と呼ばれた男は部屋を後にする。 残された社長と呼ばれた男は、ガラス張りの壁……外は高層ビルの森が眼下に広がっている……に歩み寄り、笑いを零す。 「そう、力だ……力があってこそ全てを制するのだ……フフフ……フハハハハハハハハハハ!!!」 月は、もうあとわずかで満月になろうとしていた。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ・後書き どうもこんにちわ、曹長です。 ……気がつけばまた半年近く放置。もっとがんばらにゃ。 さて、今回のお話ですが……えー、ほのぼの日常話、一話で終了のお知らせが入りました(ヲイ どーも私はなにかと若干ハード目な話が好きなようで。 今後の人間と萌えもんの関係はどうなってしまうのか? アッシュ団とは何者なのか? アキラ達はそれにどう立ち向かうのか? それはまた次回以降、乞うご期待! そして毎度のことになりますが、キャラ貸し出し・クロスオーバー等、ストーム7氏に感謝です。 それではまた、次回の後書きでお会いしましょう。
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「おや?コンパンのようすが……」 BBBBBBBBBBBB 何気ない普通の日のはずだった。いつものように俺は萌えもんマスターになるべく、野生 萌えもんをゲットしながらジム戦に向けてのレベル上げを図っていた。 その途中、最愛のコンパンは経験の粋を集め新たなる形へと姿を変えようとしていた。紛 れもない、進化である。博士にもらった萌えもん図鑑も躍起になって解説を始めた。 全身に光を帯び、彼女はあふれ出る生命の圧力をコントロールしようと、息を荒げ胸を押 さえる。いじっぱりな彼女はその苦痛にも一言すら発さない。 しかし、俺は傲慢で自分勝手にもその進化を止めてしまった。萌えもん図鑑から特殊な光 がコンパンへ照射され、進化のエネルギーを奪う。驚いたコンパンは一瞬俺へ顔を向けたが 、すぐに気を失ってしまった。 草むらを抜け、俺の膝枕で彼女を休めた。彼女のやわらかいふわふわの触覚が服越しに俺 の足をくすぐり、その微かな快感は彼女が目覚めるまでの時間の経過を瞬くものに縮めた。 「どうして……ですか」 うっすらと目を開けた彼女は抗議の表情を浮かべ、小さな手で俺の服の裾を握った。 「俺は、今のままのお前が好きなんだ」 彼女の前髪をかき分け、額をなぞる。しかし、それは無下に振り払われた。 「わたしは強くなりたい。マスターの役にもっと立ちたいんです」 眉を寄せ、真剣な瞳で俺を真っ直ぐ見つめる。 「大丈夫だよ。今のままでも十分強いさ。気にするな」 俺もここはどうしても譲れない。 「見え透いた慰めは――」 こういうときは唇で言葉を奪うのが一番良いのだ。様々な文献がそれを示す。が。 コンパンの手のひらが俺の頬に炸裂した。 「わかってくれないんですね……」 それ以上、会話は続かなかった。 その夜、自らのマスターが眠りに落ちたのを見計らってコンパンは宿の出口に向かった。 「待ちなよ」 外へ出て、星空を見上げたところをリザードンが引き止める。 「リザードンさん……」 マスターの一番最初の萌えもんで一番の実力者、リザードンには全く頭が上がらない。し かも、苦手な炎タイプと飛行タイプの両方を併せ持つ。それ以上にメンバーの空気を酷く濁 したことに後ろめたさを感じていた。 「すみません。進化できないのなら出ていきます」 語尾に小さく邪魔なだけだからと付け、コンパンは闇のほうへ向き直った。 「マスター悲しむだろうね」 リザードンの言葉がコンパンの背中を突き刺す。愛されているのはわかっている。ただ、 このまま進化できないのなら、いつか自分がレギュラーから外されてしまうのではないか。 自分は秘伝要員としても役に立たない。そう考えるとたまらなく怖かった。 「無責任でごめんなさい」 「いいよ。確かに、あんたを進化させないマスターは間違ってると思う。好きに生きな。マ スターには上手く言っておくからさ」 「ありがとうございます……」 コンパンは振り返らずに礼を言う。心を決めたのだ。 そのまま歩き出し、次第にコンパンの姿が見えなくなる。 「野生で会ったら、お互い手加減なしだかんね!」 リザードンは明るく笑って手を振った。 暗闇の足音が一瞬止まり、すぐにガサガサと音は遠くなっていった。 どれくらい歩いたかな。上がった日もまた落ちて、丁度一日くらい経った。 何回か野生の萌えもんと対峙したけど、相手のタイプもレベルもわからなくて、全部逃げ てしまった。これじゃあ強くなれないよね。ああ、もう強くならなくていいんだっけ。 不意に、月の光に輝いたりんぷんがわたしの視界を奪う。トレーナーのモルフォンのしび れごなだ。 これがわたしの進化した姿。きれい……。こんな風に、なりたかった。 しびれごなが効いてきて、わたしの体の自由は奪われた。 「いきなりモルフォンで捕まえたから、コンパンもゲットしておくか。こいつも結構可愛い なウッヒョッヒョ」 トレーナーは涎を啜り、モンスターボールを構えた。 (――ダメ、捕まる……) その刹那、空から何者かが落ちてきてわたしに覆いかぶさった。この温かい匂いは、マス ター……。 「やっと見つけたぜ、嫁よ」 マスターはすっくと立ち上がりトレーナーを睨み付ける。 「おい。人の嫁捕ったらドロボーだぜ?」 上空で旋回していたリザードンさんが舞い降りて、そこは萌えもんバトル会場と化した。 「ごめんね。あいつ、強情だからさ」 リザードンさんがチラリとこちらに目をやる。 情けなくて、申し訳なくて、でも嬉しくて、声の代わりに涙が出た。 「ちいっリザードンかよ!」 トレーナーはモルフォンにねむりごなを指示する。 「甘いぜ。リザードン、かえんほうしゃだ」 勝負は一瞬、敵のモルフォンは一撃で倒れた。後続の萌えもんもすべてリザードンさんに よって焼き払われた。やっぱり強すぎるよリザードンさん。本当にわたしの入り込める隙間 なんてないな……。 マスターがトレーナーからの賞金も頂戴せずわたしに駆け寄ってまひなおしを使ってくれ る。そして、痛いくらいに抱きしめられた。 「好きなんだよコンパン……。今のお前すべてが愛しいんだよ!どこにもいかないでくれ!」 珍しく、マスターが声を荒げた。密着した体に声の振動がそのまま伝わる。 「でもわたし、この旅についていける気がしないんです。だから……」 「もういいんだよ!」 マスターがさらにきつくわたしを抱きしめて、苦しい。 「お前が辛いなら、俺が上を目指すことでお前が追い詰められるなら俺は萌えもんマスター にはならない」 「何言ってるんですか!そんな、わたしのせいでマスターの、マサラタウンの皆さんの夢を 奪うなんて、そんなこと……絶対にできません。マスターのことを一番に考えて動くのがわ たしたちの使命です」 「俺のことを一番に考えてくれるなら、俺と一緒に平和に暮らそう。本当にもうお前しかい らないんだよ俺は」 「どうしてわたしなんかのこと、そんなに好きなんですか……」 マスターの愛に気付いてからずっと謎だった。弱いのに、役に立たないのに、どうしてこ んなに愛されているんだろう。 「どうしてって、それはもうどうしようもなく萌えるんだよ!リアルで萌えるなんて言っち まったぜちくしょう!」 「り、理由になってませんよマスター……」 「安心しろ。理解できるのは俺だけだ」 もうマスターの腕が苦しくて意識が……。 薄れゆく視界の中、リザードンさんが呆れて笑っていた。 今まで戦ってきてくれたメンバーを集めて、俺はみんなへ頭を下げた。 「みんな本当にすまない。俺はここで旅をやめる」 頭は上げられなかった。どんな顔して言えばいいのかわからない。 「あんたと一番一緒にいたのはこのあたしなんだからね。最後くらい情けない泣き顔見せな さいよ」 リザードンが俺の頭を掴んで、無理矢理顔を上げさせる。ニヤリと笑みを浮かべ、俺の頭 をぐしゃぐしゃと撫でた。 「ばっ、別に泣いてねーよ!」 赤くなった目にも気付かず強がっている俺を、皆は笑った。 「コンパンのこと不幸にしたらハサミギロチンだからね」 「不器用な奴だよなあ。他のトレーナーは誰でも一夫多妻制だよ?」 「博士のところにでも戻って愛の器の大きいマスターにお世話になるかなー」 「元々トレーナーとしての才能は微妙だったかもしれないし丁度いいんじゃない?」 口々に、メンバーは柔らかい罵倒で俺をいじる。俺は涙を堪えて照れ笑いを浮かべた。 「あたしたちが萌えもんリーグに挑戦するときが来たら連絡入れっから、絶対見に来なよ」 「ったりめーだ。じゃあ元気でな、相棒!」 リザードンと固い握手を交わし、みんなに別れを告げた。 本当はわかっていた。彼女らも本当は涙をこらえていたのを。背を向けた後、彼女らが涙 を流していたのを。 俺はあいつらのマスターだからな。 でも、もう俺はこの愛に後戻りは出来ない。したくない。 人間と萌えもんの、壁を越えた。 「じゃあ行こうか、俺の嫁よ」 俺が手を差し出すと、コンパンはまだ大粒の涙をいくつも溢していた。 手を引いて走った。どこまでも。彼女の涙が笑顔に変わるまで。 おわり
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僕はどうしようもなく臆病だ。 誰かを傷つけるのが怖い。 でも、自分が傷つくのはもっと怖い。 だから、僕は仮面をつけることにした。 それは、俺が入社して、まだ1週間が過ぎたばかりという頃、突然上司が代わった。 そして、研究内容が過激なものになった。 逆らった同僚は、黒づくめの男たちに連れて行かれ二度と戻ってこなかった。 その同僚がどうなったかわからないし、わかりたくもない。 自分は同僚のようになりたくない。 怖いから従った。 でも、傷つける側になるのも怖かった。 だから、できるだけ感情を抑え込むことにした。 自分はどんな酷いことも平気で出来る。 そういう風に振る舞っていれば、いつか本当になって、苦しみから逃れられると思っていた。 決して逆らわず、ただただ協力し続けた俺は、他の同僚より比較的自由に行動することを許されるようになっていた。 部屋は薄暗く、壁は暗い青に塗られている。 部屋には大きな水槽があり、水が張られている場所と陸地とに分かれている。 そして、水槽の中だけが明るい。 それが、私の周りにある世界のすべて。 私は物心ついたときから、既にここにいた。 だから、私は見たことがないのだが、水族館というところをイメージして造られたらしい。 そこに、白衣を着た一人の男がはいってきた。 「お疲れ様。今日の仕事はもう終わったの?」 「お前に食事をやれば終わりだ。」 彼は不機嫌そうに答える。 「フフ、毎日大変ね。もう半年になるのかしら?あなたが来てから…」 「確かにそうだ。だが、俺はお前と仲良くお喋りする気はない。」 「つれないわね。本当は優しいのに。」 「とにかく、残さずに食べろよ。お前が体調を崩すと俺の責任になる。」 彼は眉根を寄せてそう言うと部屋から出て行った。 私は食事に目をやる。 栄養価だけを考えて、味なんて一切考えていない。 どうにも味気ない食事である。 だが、そんな中に場違いなものが一つ。 ミックスオレだ。 もちろん、あの連中の出す食事にこんなものは含まれていない。 なぜ、そんなものがここにあるのか。 それは、彼と会って一週間になろうかという頃、彼からもらって初めてミックスオレを飲んだ。 そのとき私が「おいしい」と喜んだのを覚えていて、毎週金曜日の夕食に彼がつけてくれているのだ。 やつらが来てからの研究は、それは酷いものだった。 萌えもんを状態異常にするためのアイテムを開発するための生体実験。 萌えもんを売りつけた後、購入者に逆らわないようにするための拘束具の開発。 そして、最近は萌えもんにどれだけの電流を流してバイタルの変化を調べるという危険な実験をしている。 マジックミラーの向こう側で椅子に縛り付けられた萌えもんが悲鳴をあげて苦しんでいる。 流される電気はどんどん増えて行き、このままでは死んでしまうと思った。 だが、それでも流される電気は増え続ける。 俺は、やつらが怖くてそれを止めることができなかった。 そして… 彼が部屋に入ってくる。 だが今日はいつもと様子が違った。 「どうしたの?顔が真っ青よ。」 「なんでもない。」 彼はそう言うと黙り込んでしまった。 そして、突然水槽の出入り口の扉を開いた。 「どうしたの?何かの実験に行くの?」 そう尋ねると、彼は最初はぽつぽつと、しかし、途中からは堰を切ったように話しだした。 「今日、実験中に萌えもんが一人死んだ…俺は止めることができなかった… もう耐えられない。俺は誰かを傷つけるのが怖かった。でも自分が傷つけられるのはもっと怖かった。 だから、平気なふりしてやつらに協力したんだ。でも、君に優しいと言われる度に胸が痛んだ。 いつか本当に平気になると思ってた。でも、俺はなれなかった。」 彼は一気にまくしたてると私に告げた。 「だから、君たちを逃がす。」 「あなたはどうするの?そんなことして大丈夫なの?」 「大丈夫じゃない。だから、君たちを逃がしたら僕も逃げるよ。」 そして、僕は萌えもん達を逃がした。 見張りは萌えもん用に開発した睡眠玉で眠らせた。 萌えもん達は地下と空から逃げるように言っておいた。 萌えもん達と別れた僕は、やつらがいないクチバ方面に向かった。 ゲートの警備員は、こんな時間に出ていく僕を不審がっていたようだ。 しかし、僕が与えられた自由にはゲートの通行も含まれていたため通ることができた。 …おそらく、僕は殺されるだろう。 僕はやつらの研究を知りすぎている。 やつらにとって、僕は絶対に逃げられるわけにはいかない程度には重要で、迷わず殺してしまえる程度には重要じゃないはずだ。 精一杯生き延びる努力をしようとは思うが、体力もなく逃走するための知識も持ってない。 見つかるのは時間の問題だ。 せめて、僕の捜索に人員が割かれている間に、彼女たちが遠くに逃げられればいいと思う。 「おい、見張りはどうした。なぜ、寝ている。」 「萌えもんたちがいないぞ。」 「馬鹿な。自力で逃げられるはずはない。」 「誰かが裏切りやがった。」 「眠らされる前に白衣の男を見たらしい。」 「なんだと。研究員を確認しろ。」 「ヤツがいない。見つけ出せ。殺してもかまわん。」 辺りが騒がしくなってきた。 僕が逃げたのがバレたのだろう。 僕は必死に逃げた。 だが、いつの間にか追い詰められ、いつしか崖を背にしていた。 僕の前には上司と一人の黒づくめの男がいる。 「どうやらここまでのようだな。背後は切り立った崖。飛び降りても確実に死ぬ。死体もあがらんよ。」 上司がおかしそうに言う。 「君が戻ってくるなら許してやってもいい。だが、それが叶わなければ…」 黒づくめの男が銃を構える。 きっと戻っても殺されるのだろう。それに、たとえ殺されなくても、もうヤツらに協力するのは耐えられなかった。 「断る。もう君たちに協力はしたくない。」 「そうか。残念だよ。やれ。」 黒づくめの男が指示を受けて引き金を引く。 パーン 乾いた音がした。 僕は撃たれたと感じた次の瞬間、浮遊感を味わっていた。 そして、僕の意識は途切れた。 眩しさに目を開けると、そこは一面の青だった。 「ここは…」 「よかった。気がついたのね。」 青い美しい髪の萌えもんがこちらを振り返る。 「ラプラス…僕は…撃たれて…」 わけがわからない。 僕は撃たれて崖から落ちた。そして死んだはずだった。 でも、痛いところなどなく、目の前には彼女がいる。 「別に怪我は無かったわよ。撃たれたと思って驚いて足を滑らせたんじゃない?」 どうやら、そのようだ。 弾は僕に当たらなかった。しかし、撃たれたと勘違いした僕は崖から落ちた。と 「でも、君が何故ここに?」 「背中に乗せてくれた娘に一番近い海に送ってもらったの。 でも、いきなり沖に行くのは怖いから岸の近くを泳いでいたのよ。 そしたら、崖の上が騒がしくなって人が落ちてくるんだもの、ビックリしたわ。 しかも、それがあなたなんてね。」 彼女がおかしそうに笑う。 「すごい偶然だな。でも助かったよ。」 崖に追い詰められて、弾が外れて、勘違いして落ちて、そのままだと死ぬところを偶々通りかかった彼女に助けられる。 出来すぎているような気がするほどだ。 「偶然?違うわ。こういうのには、もっと他の呼び方があるの。」 「何て呼ぶの?」 「運命よ。」
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三鳥 ◆5PhIMFR8HU氏投稿作品 『伝説の萌えもんって偉いの?』 『無人発電所の怪』 『萌えもんリーグの聖火』 『天を貫く塔の頂に座する女帝』 『お料理』 『決闘、と言う名のイジメ』 『緊急呼び出し』 『雪合戦(バトル)しようぜ! 感想等にぜひお使い下さい。 名前 コメント